小樽のあめちゃん
一粒口に入れるだけで口いっぱいに広がる甘く懐かしい味。小樽のあめちゃんを皆さんはご存じだろうか。
大学に入学してすぐの頃、私はこの記事を書くために小樽を散歩していた。運河周辺を歩いていたところ、小道にひっそりと佇む、趣ある屋台を見つけた。素朴でどこか親しみのある雰囲気は、昔にタイムスリップしたかのような気持ちにさせた。
この屋台は、大正7年(1918年)創業の今年で101年目を迎える老舗、飴谷製菓。
昔の運河周辺は菓子問屋で栄えていたそうだがしだいに衰退してしまい、現在残っている飴屋はたったの二軒。そのうちの一軒、飴谷製菓では全て手作りという昔ながらの製法で、舌ざわりなめらかで美味しい飴を提供している。小樽の石炭と雪をモチーフにした"雪たん飴"と聞けば、思い当たる人もいるかもしれない。
駄菓子屋さんのような外観は子供心をくすぐる。これを見ればきっと誰もがワクワクするだろう。屋台には数十種類もの飴があり、太陽に照らされキラキラと輝く飴玉は思わず「わぁ…」と声に出てしまうほどきれいだ。ここにある全ての種類を試食できるというのだが、飴の試食は初めてだったので驚いた。
右・真ん中・左と3粒、一度に口に入れて味わってみてくださいね、と飴屋のおばちゃんに言われたが、さすがに無理だった。なぜならここの飴は、市販のものと比べて一粒が結構大きいからだ。しかしそれは職人さんの熱い想いが、一粒一粒に込められているからかもしれない。そう考えるとなんだか心が温かくなった。
私は小さい頃から飴が好きで、友達と飴交換をしたり、受験前の緊張を解くために舐めたりと、私にとって飴は思い出の一部になっている。
小樽の大学に通っている現在、こうしてこの飴に出会ったのもきっと何かの縁なのかもしれない。飴谷製菓のあめちゃんは、今までの飴とは違った優しい美味しさで、小樽の風景、小樽の人々のあたたかさを感じさせてくれる。このあめちゃんはまた一つ私の思い出の味になった。
観光名所のすぐそばでいつでも小樽を味わえる、懐かしの味。小樽のあめちゃんは今日も訪れた人々をあたたかい気持ちにさせている。
(あんず)
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※本記事の内容は2019年7月時点の情報に基づいたものです。
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