車窓から眺めたあの夕日

 札幌から通う商大生、俗に言う“札通生”なら必ず利用するJR函館本線。銭函駅−小樽築港駅間は、海岸線を走ることで有名だ。
 日本海の海沿いを列車が勢いよく走ることを、観光客は珍しく感じるかもしれない。実は私も商大に入学する前はその一人であり、毎日海を見ながら通学できることが、志望動機の一部であったとかなかったとか…。

 今は商大生としてその光景は既に当たり前のものとなってしまったが、車窓から目にしたときはいつも必ず魅了される。また、一人で座席に腰を下ろし素晴らしい景色を見たときには、なぜか寂しい気持ちになったりする。茜色の空を背景に、太陽が沈もうとする瞬間を眺めるときはなおさらだ。

 広大な日本海と、緑のラインが入った列車を、一枚の絵に収められるのは、朝里駅だけかもしれない。ここは“海の見える駅” (他の駅では見られない独特な改札があることでも知られている)として地元民には親しまれているが、観光地としては穴場スポットであろう。
 ホームに降りれば、すぐ目の前に現れる海原。向こうには小樽市内が見え、さらにその先には水平線も見える。海と反対側のホームから、列車が近づくとともにシャッターを切ると素敵な写真が撮れる。

 だがしかし、車窓から見る海はさらに格別なのである。カーブしながら進むため色々な角度から海を楽しむことができるのだ(もう少し窓をきれいにしてほしいという話はあるかもしれないが…)。

 ある日の夕方、私は札幌駅から小樽行きの快速エアポートに乗った。私はいつも進行方向にむかって、右側の座席に座る。海を見たいからだ。
 銭函駅を過ぎると現れる見慣れた海に、その日は違和感を持った。ちょうど日没の時間帯で、海面に真っ赤な夕焼け空が映っていたのだ。
 いつも使っている路線なはずだが、そのとき初めて訪れた感じがして、まるで旅をしている気分になった。それと同時になぜか切ない気持ちになった。
 そんな黄昏時に心を奪われた私は、終着の小樽駅に着いたことにさえ気づかなかった。

(まるにー)


※本記事の内容は2019年7月時点の情報に基づいたものです。