夕方の帰り道

暖かい日差しに包まれる夕方の学校の帰り道、自炊用の野菜や肉を入れたビニール袋を片手に持ち、大きな道路から逸れた脇道を歩く。

私はこの時間の近所をゆっくり歩くのが好きだ。生ぬるい風が揚げ物の香ばしい匂いととともにゆるやかに通り過ぎていく。飲み屋が多いこの商店街付近は、この時間帯がお店の開店時間なのだ。

だんだんとお客さんが集まり、賑わい始める。日によっては小さなお客さん(猫のお客さん)もいる。そんな暖かい脇道を通り、道が開けた時、その可愛らしいお店は目の前にとてんと建っている。
くまのぬいぐるみ、沢山のお花で飾られた商店街で一番人の目を引く、きらきらなばあばの雑貨屋さんだ。たまにばあばとお喋りして家に帰るようになったのも、お店の可愛らしさにフラッと立ち寄った日からだ。

ばあばは、春から初めて母と離れて暮らし始めた、ちょっと心細い私の寂しさを紛らわせてくれた。学校が始まってすぐの頃、友達ができるか心配だった私は、ばあばにそのことを相談した。ばあばはポジティブで、私のネガティブな考えも優しくて明るいものに変えてくれる。
それからばあばはいつも、お店に入っていった私に「友達はできたの?」と心配してくれる。私の小樽のお母さんは、今日も雑貨屋さんで、のんびりお客さんを待っているのだろう。

もう一つの帰り道でも素敵な出会いがあった。それは、むしむしした大雨の日の帰り道だった。
学校帰り、フラッと寄ったサンモール商店街のおやき屋さんでソフトクリームを買った。おばちゃんは、私がソフトクリームを持って帰って食べることを知ると「ちょっと待ってて」と言った。
家がすぐそこだから大丈夫だよ、と伝える私をよそに、ささっとあたらしいソフトクリームをケースに詰め、トッピングも雨で濡れないように包んでくれたのだ。おばちゃんの気遣いに、むしむしな天気もなんだか気にならなくなった。

小樽ではフラッとお店に寄る度に出会いがある。観光地だけでなくただのなんでもない商店街で。今日も私は、夕方の学校の帰り道が楽しみだ。

(べ)


※本記事の内容は2019年7月時点の情報に基づいたものです。