運河公園の桜

春の陽射しを受けて、花びらが輝く運河公園の桜。

この桜は、普通の主婦から、「小樽運河を守る会」の会長となり、運河保存運動を先導した峯山冨美さんが小樽の街への想いを込めて植えたものです。
公園からは、峯山さんが守り抜いた小樽運河と、石造りの倉庫群を眺めることが出来ます。

峯山さんは、60歳をすぎて小樽運河を守る会の会長になり、運河の埋め立てを止める運動の先頭に立ちました。
10年以上、小樽の街を二分する”運河論争”。
峯山さんは対立ではなく、小樽の未来を真剣に考えることに力を注ぎました。
その結果、運河の全面保存は叶わなかったものの、半分は埋め立てられずに現在に残すことができました。

峯山さんは母校である小樽桜陽高校の後輩達に向けて、
「過去のことも未来のこともよく考えて、自分が生きる時代になにが大切なのかを見極める力をつけてください」
と話していました。

観光地として賑わう今の小樽の街に、運河と周辺の街並みはもはや当たり前であり、そして不可欠でしょう。しかし未来のことを考えて真剣に見極め決断するということは、シンプルに見えてとても難しいことなのかもしれません。

母校桜陽の創立百周年と観光都市小樽の賑わいを見届けて、峯山さんは2010年に96年の人生を終えられました。

現在、小樽運河はクルーズ体験や、人力車に乗ったり、また冬には雪あかりの路の会場になったりと小樽の象徴として明るく生き続けています。
そして、私たち小樽商科大学の学生も、運河を清掃するボランティアを行ったり、さらに運河、小樽を活気づけられるようなアイディアを構想したりしています。

ガラス、寿司、スイーツ、天狗山からの夜景など数々の魅力に溢れた小樽の街、そしてその観光の中心地である小樽運河。
“未来を考える”峯山さんの思想をつなげて守って行くのは、今度は私たちの番です。
生涯をかけて小樽を愛した峯山冨美さんの想いは、運河公園の美しい桜が今もこの街に伝えています。

(みかちゃん)


※本記事の内容は2018年7月時点の情報に基づいたものです。