天狗山でのラブレター

 高校1年の時、クラスで先生が見せてくれた日本の映画があった。その名は、「ラブレター」という小樽を背景とした1995年の映画だった。

 あの時初めて小樽に接した。

 広闊な白い雪の街で切なく流れる青春を、現在残ってる人の心を、よそ見する間もなく見つめるしかなかった。あの時、必ずあの街に行ってみようと思ったことが、この小樽商大に入学することで叶えられて少し運命を感じた。
 この映画には小樽の様々な所が出ている。その中で一番インパクトがあった場所が「天狗山」だった。

 天狗山は北海道小樽市にある山である。天狗山の雪が積もったスキー場での、彼女の「お元気ですか」は映画のメイン広告である分、脳裏に残るには十分だった。
 講義のあと久しぶりに暖かい天気の下、写真を撮るため、天狗山に向かうバスに乗った。冬でもないのに、天狗山に行く外国人や日本人の観光人がいた。ケーブルカーのチケット売り場の前にあった、「小樽スキー連盟創立100周年記念」の鐘は何かぐっと来た。

 ケーブルカーを乗って見下ろす小樽はあまりにもきれいすぎて、20枚以上は撮ってしまった。隣にいた日本人家族も同じく浮かれていて、きれいなものを見る人の感想って同じだと思った。
 ケーブルカーから降りてみた小樽の景色は、一瞬ぼっとするほど美しかった。大学と商店街だけ歩くと分からない小樽のすべてと、終わらない海と空の見分けもつかない青は、疲れていた私に感動をくれた。
 雪が積もってない天狗山は、風で揺れる緑の波が、生動感のあふれる自然の偉大さを感じさせた。

 周りには古い建物が見えた。その前に止まっていたスキー場の車は、夕日とその景色に溶け込んでノスタルジックだった。ケーブルカーのすぐ前にあった天狗の像も、小さい鳥居や弘法大師の像なども、その後ろのきれいな森の隙間からの光で、一瞬映画のカットのように非現実的だった。

 日が暮れて山から下りながら、何十枚もの写真を、ラブレターの如く、両親と友達に送った。冬になったら、必ずまた天狗山に来て写真を撮りたい。その時には、映画の如く「お元気ですか」と呟いてみたい。

(抹茶味ぼの)


※本記事の内容は2018年7月時点の情報に基づいたものです。