おいしい寄り道を。
「ちょっと早く着いちゃうね。」
そんな言葉をきっかけに、南小樽駅にちょっと寄り道。
なにか目的があるわけでもなく、ふらりと駅を降りる。
何かないかと歩いていると、5分ほど歩いた先に「亀十」と、どっしりとした文字で書かれた看板のお店がある。
看板からはどんなお店か、全く想像できないが店内を覗いてみると、なにやらパンを売っているようだった。しかも、普段見かけるパンとは、なにやら様子が違う。ショーケースの中で、たくさんのパンが手招いているようだった。
好奇心を掻き立てられ店内に足を踏み入れる。
何を食べようか、選ぼうにも戸惑ってしまう。とにかく種類が多いのだ。
私の注文を待っている店員さんに申し訳なさを感じながらも、じっくり選び、厚切りクリームパン、ナポリタンパンの2つを購入。
少々多い気もしたが、友人もいるので食べきれるだろう、残ったら後で食べたらいいと自分を納得させ、食欲に従うままに2つ購入してしまう。
私たちが店を出るときに、地元の方と思われる人とすれ違った。
受け取ったパンの袋を触ってみると、まだほのかに温かい。
友人も私も、朝ごはんがまだだったこともありお店の近くの公園で食べることにした。
取り出すと、クリームパンは溢れんばかりのクリームを、優しく柔らかに食パンが包み込んでいる。
ナポリタンパンは、弾けそうなナポリタンの赤を、コッペパンが下で支えているようだった。
食べ切れるだろうか、という不安を抱くも、それはすぐに払拭されることになった。
クリームパンの、まろやかながらあっさりとしたクリームとピーナッツの香ばしい香りが鼻を抜け、食パンの柔らかな舌触りが心地いい。
ナポリタンパンはケチャップの酸味と、パンのほのかな甘みが絶妙にマッチしていて、モチモチとしたパスタと、ふわふわとしながらも食べ応えのあるコッペパンの食感が相まって舌の上を優しく撫でていく。
気がつくと、友人と2人でぺろりと食べ切ってしまっていた。
それでもまだ、少し時間がある。
もう一度お店に戻り、今度はお昼に食べるためのやきそばパンを買い、友人と2人、向かう海を見下ろす静かな道を、ゆっくりと歩き始めた。
(まゆこ)