観光地の中の憩いの場所

 みなさんはこの町でどのような時間を過ごしたいだろうか。慌ただしく人が流れる観光地だけではない小樽がここにはある。
 運河公園は、道内有数の観光地である小樽市、小樽運河の北側に突如現れる、憩いの場である。

 小樽運河の南側は多くの観光客が訪れ、いつもにぎわう。一方、「北運河」と呼ばれる運河の北側は、その賑わいから1㎞ほどしか離れていないにもかかわらず、のどかで静かな時間が流れる地区となっている。また、貨物の荷揚げという運河のもともとの役目が終わって運河の半分が道路として埋め立てられた南側に対し、北運河は幅が当時の40メートルのまま残され、作業船などの小型船が係留する、運河本来の姿を見せている。

 そんな北運河の端に位置しているのが運河公園だ。私が運河公園に初めて行ったのは、大学一年生の夏、所属するサークルの自主イベントの会場が運河公園だったのがきっかけだった。広々とした公園に何台もテントを立て、来てくれた市民の人達に向けて様々な催しをした日の景色をよく覚えている。

 小樽駅を出て、15分ほど歩き海が近づいてきたなと思ったら、石造りの囲いに囲まれた広場が姿を現す。公園のすぐ近くには小樽港があって、港町の風情や海の香り、音が心地良く感じられる。周りは同じようにレトロな石造りの建物が囲む。古くからの小樽の姿を色濃く残した風景がそこには残っている。公園の中央には大きな噴水、脇には小樽にゆかりのある人物の銅像、これまた石造りの休憩所が設置されている。

 実は、公園の周囲を取り囲むレトロな建物のひとつは、なんと国指定重要文化財に指定されている旧日本郵船(株)小樽支店の建物だ。さらに、公園内にある休憩所は小樽市の指定歴史的建造物に指定されている旧日本石油(株)倉庫を再利用して使われている。中央にある噴水は、石造りが造られた明治・大正当時に造られていた構造物の、「船入澗(ふないりま)」形状を模して造られたものだ。

 このように、運河公園を包むレトロな雰囲気は「本物」の小樽の歴史に基づいたもので、小樽の「本来の姿」を今に残す地域だ。華やかで観光客で賑わう小樽も今の小樽の姿ではあるけど、同じく運河公園が市民に与えている落ち着いた空間も今の小樽だ。

 小樽に観光に来る人、わたしのように毎日小樽に通う学生にはぜひ一度、運河公園の雰囲気を味わってみてほしいと思う。
 小樽特有ののどかな雰囲気だからこそ味わえる、ゆったりとした時間はきっとあなたにとって、もっと印象深いものとなるだろう。

(鎚)