ひっそり佇む市民食堂

 小樽に来て、まず行くところは、有名な運河通りだろう。あとは、駅前であったり、ウイングベイに行く人もいるかもしれない。

 そんな、皆がパッと頭に思い浮かぶ観光名所を巡るのも良いだろうが、たまには、コアな安くておいしい店を訪ねてみるなんてどうだろうか。小樽には、地元住民に昔から愛されてきた店が多くある。これから紹介する食堂も、その一つである。

 小樽市民食堂は市民会館の中にある。一目見ただけでは、その中に食堂があるなんて思いもしない。周りをぐるりと回ってみると、緑色ののぼりと看板が見えてくる。そこが入り口である。
 中に入ると、どこか昔懐かしい音楽が聞こえてくる。「いらっしゃいませ~」と優しい笑顔の店員さん。お客さんも地元民ばかり。そんな居心地の良い雰囲気の店である。

 この店でよく頼まれているものがある。日替わり定食である。2つか3つの中から、好きなメニューを選ぶことができる。安いときは500円から、高くても800円かからないことが多い。それなのにボリューム満点でとても美味しい。まるで実家に帰って母の手料理を食べているかのような安心感。
 また特筆すべきは、もれなく小鉢が付いてくるということである。ショーケースに並べられた小鉢の中から、2つ選んで食べることができる。どれも美味しそうなのできっと悩んでしまうに違いない。

 実は私は、ここの常連で、一時期は毎日のようにお昼を食べに来ていた。何も言わなくても大盛りにしてくれた。お会計の際に「いつもありがとうございます~」と声をかけてくれた。
 最近は忙しくなり足が遠のいていたが、あの店員さんたちは今もいるのだろうか。安くてボリューミーで美味しくて、どこか懐かしい料理たちにも会いたくなってきた。こんな店が市民会館の中にひっそりと佇んでいるのだ。
 一度訪れてみたらきっと感じるはずだ。思いもしないところに新たな発見がある小樽の面白さを。

(ななな)


※本記事の内容は2018年7月時点の情報に基づいたものです。