福島工務店

 福島工務店は、小樽市立病院から札幌側の若松十字街に下りる手前の小路(実際には大通りなのだが・・・)を左折したところに位置している。
 向かい側に古い倉庫や、古い住宅が立ち並んでいたのだが、近年更地になり、駐車場や福島工務店の土場として使われているようだ。

 前述の曲がり角から大変見通しが良くなり、曲がり角のかなり手前から、この福島工務店行灯看板がよく見えるようになった。

 さて、福島工務店の福島正紘社長は、昭和20年(1945年)の元旦生まれ、まだまだ現役、若さ一杯で、小樽市内の各種団体の役員も歴任され、小樽経済界の重鎮としての地位を築いている。

 福島さんが、小樽南ロータリークラブ新年例会の年男卓話の中で、こんなことを言ったことがある。私は戸籍上昭和20年1月1日生まれになっているのだが、その前年昭和19年12月に生を受けている。当時、先代である父親は徴兵されており、母親の意思で、1月1日に変更して、出生届を出したというのだ。年が変われば、徴兵を1年遅らせることができるというのが理由だったそうだ・・・。

 軍国主義真っ只中、産めよ増やせよの時代に、市井の母親が、子どもを守るために儚き抵抗を試みたという話しを聞き、どんなに思想統制された時代であっても、母親は強いと改めて感じる素晴らしい卓話であった。

 さらに卓話で、後に復員した父親に、母親はこっぴどく叱られたと、母が言っていたと笑って話していた。こちらはこちらで明治男の真骨頂。顔で怒って、心で笑ってという感じかと思った次第だ。

 この福島工務店は、復員した先代が昭和27年(1952年)に創業されている。今年平成30年(2018年)で創業66年という老舗企業だ。

 現在は、新進気鋭の建築家として、ご子息の慶介専務が、歴史的建造物や重要文化財の修復、復元工事を行い、自身も会社の裏にある小樽の歴史的建造物の一つ旧岡川薬局を買い取り、回収し、建物自らが利益を生み出す方法を実践しているモデルケースとして、内外から大変注目されているのは、周知の通りだ。

 

(斎藤仁)


※本記事の内容は2018年5月時点の情報に基づいたものです。