坂と雪と知恵の町、小樽

私は雪のあまりない地方から小樽に引っ越してきた。
小樽の冬は寒くて、雪が多く、さらに坂があるということで転んでしまうかも、行く前からそう思っていた。

小樽で過ごすこと5,6カ月、雪が降り始めた。雪が多く道幅は狭い。雪でかたどられた道はでこぼこだった。
さらに道は氷。

バランスを崩すし、滑るし、歩きにくい道だった。その道を私は夏と同じ靴で歩いていた。いつか転んで大きなけがをしてしまうのではないか。

そんな不安を覚えていた時、地元の母から一通のメールが届いた。
「お父さんが骨折した。通勤中に転んだみたい」状況が呑み込めなかった。

地元の少ない雪のなじみのある道でさえそんな事故が起こるのだ。雪、坂、氷、その三つが地元の数段激しくある小樽に越してきた私が通学中に転ばない理由がない。

そんな時、小樽に来る前に見たテレビを思い出した。地獄坂を滑らないで歩く方法が紹介されていた。そこで小樽の長靴が紹介されていた。底にはスパイクがついていて、滑りにくくなっているという。

その話を思い出し、私は靴を買いに行った。大きな靴屋でその靴は見つかった。テレビでは長靴しか紹介していなかったが、ブーツもあった。箱の上に展示してあったブーツのサイズが丁度よかったので履いてみた。とても歩きやすかった。まるで昔からこの靴を履いているかのようだった。

決めた、この靴を買おう。
即決だった。4年間大事に使うことに決めた。

次の日、私は初めて靴を履いて外に出た。坂を下って小樽駅へ。
今までならば氷を避けて、バランスの取れない雪の間を必死に潜り抜けていった道。果敢に氷に挑んだ。全く滑らない。氷を掴むように歩いて行ける。

その日から、氷と雪は友達だ。氷を見つけたら、わざわざその上を歩く。氷を掴む感覚が楽しい。雪もがっちりと捕まえて、でこぼこ道を歩いて行ける。坂と雪と氷の町、小樽には過酷な環境を乗り越えていく知恵があふれている。

(イナップル)