鰊御殿

 鰊御殿は高島岬、日和山灯台の下に位置している。北炭創立70周年を記念して、積丹半島の泊村にあった旧田中家住宅を、昭和33年(1958年)に移築してきた、北海道の有形文化財である。昭和35年(1960年)に指定されたが、民家では初だったことを付け加えておく。

 ホテルノイシュロスの下にある祝津パノラマ展望台から見える、日和山灯台と鰊御殿の姿は、この展望台の目玉景観の一つと言われている。

 私は鰊御殿には何度も入館している。鰊漁番屋建築の説明はもちろんの事、鰊漁や鰊加工に使われた道具が展示されている。当時の衣装を着て記念撮影する事もできる。

 北炭によって移築され、すぐに小樽市に寄贈していただき、すぐに今のように一般開放している。開設当初は団体予約するとここに泊まる事ができた。しかし、昭和50年代だったと思うが泊り客が酔って傷害事件を起こした事があり、それ以来宿泊は禁止されて現在に至っている。

 鰊御殿には明確な定義は決まっていないようであるが、北海道の日本海沿岸に鰊漁で財を成した親方たちが建てた豪華絢爛な番屋建築と謳って間違いないと思う。

 高島や祝津地区には青山家、白鳥家、茨木家といった大漁家となった鰊漁親方たちが居を構えていた。青山家本邸は野幌の開拓記念の村に移築され、白鳥家番屋は現在は休業中であるが飲食店リニューアルされ、茨木家中出張番屋は国の補助金で往時を偲ぶ形に復元され、総合学習や生涯学習に大いに利用されていると聞いている。

 小樽港を挟んだ札幌側の平磯岬にある銀鱗荘(旧猪股邸)は、余市からの同じく移築された鰊御殿である。鰊漁で栄えた小樽であったのだが、どちらの鰊御殿も小樽のものではなかったという何とも因果な話しであるが、この二つの鰊御殿が、両方の岬の上から小樽の街を見守っているように見えなくもないと思うのだが・・・、いかがなものだろうか!!!

(斎藤仁)