細い路地裏

 小樽は坂が多い町、と言われるが坂だけでなく細い路地裏も多く感じる。小樽商科大学への道のりの途中には、どこに続くのかわからない、車も通れないような細い路地が存在する。
 駅の近くを歩いて少し中道に入ってみてもすぐに細い路地裏は見つかる。昼間は錆びたシャッターが下りているスナックや明かりのついていない居酒屋の店看板、それらが両脇に並んで太陽を遮って、空を電線がいくつも通るのだ。大きな通りからも外れたそれらは静かで、人も滅多に通らない。

 そういった道を見つけると決まってわくわくしてしまう。何の変哲もない狭いだけの路地裏だが、どことなく知らない世界に来たような、そんな気持ちになるのだ。

 北海道は比較的広い道が多く、地元にも車1台すら通れないような細い道があまり存在しないことから、物珍しさもあるのかもしれないし、薄暗い路地に店が軒を連ねる光景に、昭和の雰囲気を感じ取るせいもあるかもしれない。そんな細い路地を抜けたら見知らぬどこかに繋がっている気がして、私の中の冒険心が擽られるのだ。

 実際は、細い路地を抜けても何か面白いところに出るわけではないし、下手をするとすぐ大通りに出てしまって見慣れた風景になってしまうのだけれど、たまにこんなところで一体誰が知っているというのだろう、と思うような店に遭遇することもある。
 そういった店を見つけたときは、私だけの秘密ができたようで楽しくなる。そんなはずはないのだけれど、この店を知っているのは私だけかもと思うような優越感のような何か。そういったものを発見できるのも細い路地の先だと思うのだ。
 この前もヴェネツィア菓子を提供するカフェを見つけた。こじんまりとした暖かな雰囲気のそこは、もう一度ゆっくりと行ってみたいカフェだ。

 観光スポットでもない、目にも入らないかもしれない細い路地だけれど、もし小樽に来るならそういった細い路地も楽しんでみてほしい。その道の先で、地元民だって知らないような何かに出会えるかもしれない。

(いよかん)