世代を超えて愛される喫茶店

 オレンジ色の照明に照らされた店内。天井にはシャンデリア。ゆっくりと流れるクラシックミュージック。赤いビロードのソファは体の重みをしっかりと受け止めともに沈んでくれる。
 なんて居心地が良いのだろう。当時高校生だった私はどこかで読書をしたいと思い、喫茶「コロンビア」に入った。
 だれでも気さくに入りやすそうな素朴な雰囲気の外観とは打って変わって、上品でシックな店内に驚く。読書には紅茶かコーヒーがお似合いのスタイルであるだろう。
 しかし、甘いものに目がない私はメニューからチョコレートパフェを注文した。食事だけでなくデザートの種類も豊富だ。お値段は高すぎず、特別安いわけでもない。ちょうどよい。小樽らしい、という印象を受けた。これは昔からある飲食店が多いためだろうか。なんとなく信頼感があって良い。

 しばらくして出てきたパフェに私は目を丸くした。大きい。前言撤回だ。このサイズでこの値段は安い。チョコレートとバニラのアイスクリームにウエハースがささっている。下の層にはなんとミルクのソフトクリームがつまっている。
 これは珍しい。よくパフェの一番下にはコーンフレークやスポンジケーキといった比較的重たいものが入っていることが多い。それが私にとってはパフェにおいて残念だと思う点であった。

 しかしコロンビアのパフェにはあの重たさがなく、最後まですっきり美味しく食べることができる。アイスクリーム好きには本当にたまらないものだ。パフェの美味しさに感動した私は当初の目的であった読書を忘れて店を出た。頭の中は次いつ来ようかな、何を食べようかな、という思いでいっぱいだった。

 それからは友達と学校帰りや試験が終わったあとにはよく訪れた。ある休日、家族といるときに「喫茶コロンビアが最近のお気に入りなんだ」と何気なく話した。すると父と母が顔を見合わせて「懐かしいね」そう微笑んで言った。祖母も話をきいていたようで「あらあ、今の若い子も行くのね」と話しに加わってきた。そうだ、父も母も祖母もみな小樽で生まれ小樽で育ったのだ。この瞬間、三つの世代が喫茶コロンビアを通じてつながった。

 「高校生のときよく行ったわあ」「実はおじいちゃんと若いときにデートでよく行ったのよ」「あのソースカツ丼また食べたいなあ」
 もう私のほうが置いてけぼり状態だ。やれやれ、という表情をしながら私は心の中でくすっと微笑んだ。

 「今日のお昼ご飯はコロンビアになりそうだ」。昔から変わらないものが身近にある。変わらない良さがここ小樽にはある。

(髙野)