四年目の桜
小樽の良さを人に伝えようとした時、私はどうしても大学以外の場所でどこか素敵な場所はないかと考えてしまっていた。観光の名所や、小樽ならではの老舗、隠れた名店などなど、だ。
しかし、大学生活を振り返ってみた時、「こんなに恵まれた環境は他にないのではないだろうか。」としみじみと感じた。
大学は最も身近な小樽であり、3年間毎日のように通っている場所だ。夏に窓から見えるのは、青い空だけでなく目にも鮮やかな山々や緑。冬には山々に雪が積もり、辺り一面が真っ白な景色が目に飛び込んでくる。
夏は確かに駅から大学までを登ると暑いし、冬の帰り道は地面が滑るうえに体が芯から冷えるほど寒い。
けれど、私はそれ以上にゆったりとした小樽の四季の移ろいを楽しんでいる。景色が素晴らしいのは夏と冬に限ったことではない。
むしろ、季節の変わり目ともいえる春と秋こそ、素晴らしい景色を見せてくれるのだ。
それは、坂を登りきって校門をくぐると見えてくる、桜の木である。春には満開の桜の淡い桃色が、そして秋には鮮やかなオレンジと紅色の紅葉が学生を出迎えてくれるのだ。
中でも私は桜が好きで、入学して以来毎年、桜の木の下で友人と写真を撮っている。目で見て直接楽しむのはもちろん、同じ場所で毎年写真に収めてみるのも、時間の経過とともに楽しめて良い。
桜は咲いてから散るまでの期間が短く、その儚さも私を惹きつけてやまない。授業に間に合わないからと急ぎ足で過ごしたりしていると、季節の移ろいにひょっとしたらあまり気付かないかもしれない。
しかし、忙しい毎日の合間に、ふと連なる木々に目を向けてみてほしい。その鮮やかさ、美しさにはっとするはずだ。
この冬を超えたら、次は四度目の春。
学生生活最後の春、私の目に桜はどのように映るのだろうか。
将来への少しの期待と、大きな不安を抱きながら、春を待つ。毎年写真を撮っている友達と、今年もいつもと同じように写真を撮れることを願って、筆を置く。
(かまとちよ)