ひろせ商店

国道5号線を札幌から小樽に向けて車を走らせると、星置を越えたあたりで「ここから小樽だぜ」とカントリーサインが見えてくる。そして、そのカントリ―サインを越えて少し行くと、左側に「ひろせ商店」というお店が見えてくる。

すぐに分かるはずだ。
だって、お店の大きな窓に白い張り紙がいっぱい貼ってあるんだも。

僕はずっと前からここにお店があることは知っていたけど、なかなか行く機会がなかった。
が、最近、ここの手作り飯寿司がメチャクチャ美味く、しかも完全手作り完全無添加であること知った。
日本酒が大好きな僕にとって、飯寿司が美味いとなるともう我慢できない。

早速、2月の寒い夕暮れ時に訪ねた。
訪ねてみると、そこは昭和の風情香る昔ながらの「お店屋さん」だった。

話は少し逸れるけれど、僕が幼少の昭和の頃、親戚の叔父夫婦が同じようなお店屋さんを営んでおり、僕が遊びに行くたびに親戚のおばさんが、店先から「おお、よく来たな」と迎えてくれたものだった。
「ひろせ商店」に入った瞬間、そのことを思い出し、最初に浮かんだのは「懐かしい」という言葉だった。
そして中に入ると、まるであの頃と同じように、ニコニコと「おばちゃん」が迎えてくれた。

店先には、樽に入った飯寿司と漬物がずらりと並んでいる。
ひとつひとつ試食されてもらいながら、(勝手に「おばちゃん」と書いてしまいましたが)広瀬光子さんにいろいろとお話を聞かせていただいた。

積丹で生まれ育ったこと、その縁もあり積丹から新鮮な素材が届くこと、全て手作りで完全無添加であること、そして、完全無添加であるがゆえ、12月から2月までしか販売していないこと、そしてそして、そのわずかな期間に買いに来てくれるお客さんをガッカリさせないよう、正月も休まずお店を開けていること。

このおばちゃんのこだわりの強さと、正月も休まずにお客さんを迎え入れてくれる温かさに、僕は感動すら覚えてしまった。

何を買おうか迷いに迷った結果、「オオバ」と「ホッケ」の飯寿司を買った。
「オオバ」っていう魚、聞きなれないでしょうね。僕も初めて知りました。それはね、お店にいっておばちゃんに聞いてくださいな。

帰り際、「ほれ、これ持っていきなさい」と大根の醤油漬けをポンと渡してくれた。
さっき初めて会ったばかりなのに。

家に帰り、小樽の地酒「寶川純米吟醸」をチビチビやりながら、さっそくいただいた。
ヤバいっす、箸が止まらないっす。酒も止まらないっす。

みるみるうちに目の前から飯寿司がなくなっていくのが惜しい。
が、「また買いに行けばいいべや」と思い直し、おおばの飯寿司をパクパクと口に運んだ。
そして、
「今を逃すと、今度は来年になっちゃうんだなあ」
と思いつつ、まるで親戚のようなあの優しいおばちゃんの顔を思い出していた。

(みょうてん)