はじめての定食屋
私がはじめて定食屋に行ったのは大学二年生の時の事です。チェーン店のレストランではない、昔ながらの定食屋。小樽にはそんな昭和を感じさせるお店がいくつもあります。
その中で私が紹介したいのは『赤天狗』という定食屋さんです。
その店に初めて行ったきっかけは、大学の先輩からの電話がきっかけでした。大学の帰り道で会った時には必ずといっていいほど一緒に夕飯を食べに行くほど、仲良くさせてもらっている先輩です。
僕が家で漫画を読みながらゴロゴロして、「夕飯の準備するの面倒だなぁ」なんて思っていた時に電話がかかってきました。
「なぁ、メシ食いに行かねえか?」
「何時っすか?」
「じゃあ、六時くらいにうち来て」
「了解」
先輩と合流して赤天狗に向かいました。
センパイの家は国士無双という雀荘の近くで赤天狗までは歩いて10分くらいです。そのお店はサツドラのある大通りを道なりにまっすぐに行けばつきます。
赤天狗はマスターとその奥さんの夫婦で経営なさっているお店です。
サンマの塩焼き定食を頼みました。注文が来るまでに先輩が奢ってくれたビールを飲みながら雑談をしていました。出て来たのは、サンマにごはん、味噌汁、それと漬物という、これぞ定食といった感じでした。サンマは大きくて皿からしっぽがはみ出していました。一人暮らしでは、なかなか魚を焼いたり味噌汁を作ったりしないので、非常においしく感じました。
そのあとも何回もその店には行きました。先輩と店のマスターから、ビールのつぎ方を教わったり、商大の退職した教授のお話を聴きながら酒を飲んだり、いろいろな思い出ができた場所です。
小樽には似たような古い店が多いですが、その多くは店の主人夫婦が二人で経営していて、私が大学を卒業したらもう何回もくることはできないでしょう。
小樽は昭和の姿をところどころに残した場所ですが、それもどんどん新しいものと置き換わっています。でも今の小樽は、ゆっくりと流れる時間の流れを目に見て感じられる素敵な場所です。古いものが無くなってしまうことを止めることはできませんが、今しかない小樽をこれからも楽しみたいと思います。
(はきとら)
※本記事の内容は2016年2月時点の情報に基づいたものです。