静かな町の教会
片道1時間半ほどの時間をかける私の通学は、慌ただしく人が行き交う札幌駅からJRに乗ることから始まる。1時間ほどJRに揺られ小樽に近づいていくにつれて、町並みはだんだんと落ち着いていく。
小樽駅についてからも大学までの道のりは長い。歩き始めて最初の数分は駅前の市街地であり、まだまだ人も大勢いるが、サンクスのかどを曲がり、坂道に入ってからは人影も一気に少なくなる。
札幌の家を出てからここにたどり着くまでの間、私の中の世界がどんどん静かになっていく様子を楽しんでいた。
静かでどこか寂しい大学への道を歩いている途中、小さな教会があることに気づく。あまりにもひっそりとしているので、もしかしたら存在を知らない学生もいるのではないかと思うほど、小さな教会だった。
忙しい日々を慌ただしく過ごしていた私だったが、ある日その教会の前で足を止めてみた。周りにも中からも、人の存在感が感じられず、急に異世界に迷い込んだかと錯覚させられるほど神秘的で、思わず見とれてしまった。静けさの象徴であるかのようなその建物は、ひっそりとだが、確かにそこに存在していたのだった。
小樽は静かな町だというのが私の認識だ。
もちろん北海道でも有数の観光都市であり、一年を通して多数の観光客で賑わっているのも事実だが、小樽の景観の良いところは新しさ、現代感を感じさせないところにあると思う。
小樽商大生となり、札幌から通い始めた頃はこの古臭い景観があまり好きにはなれなかったが、今ではこの教会が代表するような静けさがとても好きになっている自分がいる。
札幌のような慌ただしさを微塵も感じさせないようなこの雰囲気こそが小樽らしさであり、この雰囲気は未来にも残していってほしいものだと個人的には思う。
(塚本)