最終列車の連結作業

 小樽駅といえばあなたは何を思い浮かべるだろうか。

 JR小樽駅には名物といっていい「裕次郎ホーム」というものがある。これを目当てに観光に訪れる人は多くいるだろう。また、ただ単純に小樽に行きたいために、交通手段として小樽駅を使用している人もたくさんいる。小樽駅からは、札幌方面へはもちろん、余市方面へ向けても列車が走っている。そして、さまざまな列車が止まり発車するこの小樽駅だが、ここでは普段見られない物珍しいものを見ることができる。

 私がそれを初めて目にしたのは、小樽の大学に入学したばかりの、19歳の冬であった。
 その日は21時に授業が終わり、そのあとに友人と遊んでいた。楽しいときは時間が過ぎるのが早く、友達と別れ駅へ向かった。小樽駅から札幌駅へ向かう最終列車の時間は23時であり、終電というものに乗ったことのない私は、なぜか心を躍らせていた。
 小樽駅に着き、最終列車のいる4番ホームへと向かった。もうすでに列車は来ていたが、そこで驚いたことがあった。車両が4両しかないのだ。札幌から乗る列車ではまず見たことがない短さで、唖然とした。するとその時、ホームの後方にも列車がやってきた。さっきの列車がまだ出発していないのにと不思議に思い、そして衝突してしまうのではないかと不安を感じたのを今でも覚えている。

 しかし後ろから来た列車は徐々に速度を落としていき、もともといた列車と少しの間隔をあけて止まった。そこにいた駅員の方に尋ねると、二つの列車を今から連結すると言われた。そこには数人の作業員の方がおり、難しそうな作業が始まった。私は初めての光景に興奮していた。そして夢中になっていた。数分で作業が終わると、追加列車の車内に明かりが灯り、ドアが開いた。私は口をぽかんと開けそれを見ていた。すると先ほどの作業員さんが、もうすぐ出発だからと、私を車内へ案内した。ほんの数分の出来事であったが、小樽駅ならではの光景を見ることができた。

 あれからおよそ3年の月日が流れた。3年前の自分は、偶然列車の連結作業を目にしたが今は違う。最終列車が来ても私は焦らずにベンチに座っている。そして22時53分。追加の列車が来たのを横目に4番ホームへと足を運ぶ。ドアが来る位置を把握しているため、そこへ立ち、いつも元気に連結作業をしている作業員の方を心の中で応援している。前はじっくり連結作業を見ていたが、今は違う。いつもありがとうという気持ちを胸に、ちらっと親のような気持ちで見ているのだ。そうしているうちにドアが開き、札幌へ向かうのだった。

 小樽駅といえばあなたは何を思い浮かべるだろうか。この文章を読んだ後に、もし小樽駅から最終列車に乗る機会があれば、ぜひ一度、連結作業に目を向けてみてほしい。

(チンアナゴ)