アイアンホース号
小樽は北海道で最初に鉄道が開業した場所である。
当時の路線である旧手宮線は小樽でも有数の観光スポットであるため、ご存知の方も多いだろう。
その小樽に、今も走る蒸気機関車が存在しているのはご存じだろうか――。
小樽市総合博物館。
観光でにぎわう駅前や運河沿いから少し外れた場所にあるこの博物館は、北海道の鉄道発祥の地である旧手宮線・手宮駅の構内敷地5.8haを利用して設置されている。鉄道・科学・歴史館、蒸気機関車記念館、鉄道車輌保存館の3つの屋内施設が連なる複合型の博物館である。
屋内では鉄道に縁ある様々な資料や、実際に使われていたパーツの一部が展示されている他、科学展示室では科学的な仕組みを用いた装置が様々設置されており、地元の親子連れでにぎわっている。
科学展示に鉄道展示と不思議な組み合わせで、また置いてある展示物のどれもが少しマニアック。よくある博物館とは少々趣が違うものの、子どもたちの笑顔があふれる素敵な博物館だ。
この博物館には、夏季限定の屋外展示が存在し、広大な空間に蒸気機関車やディーゼル機関車、貨車や客車が次々と並べられている様は、鉄道にそれほど興味がないという人でも思わず目を見張るものがあるだろう。
私がこの施設を訪れた際には、子どもたちが屋内の展示に興味津々であるのと対照的に、この屋外展示には若い男性やお年を召した夫婦が多く見受けられた。
こうした屋外展示の一つに、走る蒸気機関「アイアンホース号」が存在している。
このアイアンホース号は小樽市総合博物館の前身である北海道交通記念館開館に合わせアメリカから輸入されたものであり、この地での運行に合わせ修復が行われている。
黒々とした重厚な見た目でありながら、アクセントに使用されている赤色の影響か、どこか可愛らしさの残る印象だ。
屋外展示場が開放される夏季期間限定で、屋外展示場をぐるっと囲むレールの上を一日に数回運行する。
たくさんの機関車や貨車、客車の周りを力強く走る様は、アイアンホース号がアメリカから輸入されたという事実を知っていてなお、小樽が北のウォール街と呼ばれていた時代を想起させる。
北海道での最初の鉄道開業の地である小樽。
小樽を訪れた際には、駅前に残るかつての路線跡地を訪れる方が多い。
是非一度、かつての路線跡地を「走った」列車たちにも会いに行ってほしい。
(hatie)