冬の坂
毎度のことながら、30年以上前の学生時代の話です。
ある真冬の寒い日のこと、富岡荘の僕の部屋に、後輩があわてふためいて飛び込んできた。
「みょうてんさん、助けてください!」
「おー、なした!なした!」
「ちょっと、来てください!」
何事ぞと、その後輩について行った。
すると、彼の住んでるアパートの坂の中腹にいつも停めてあるはずの彼の車がない。
「あれ、車、どうしたのよ?」
と聞くと、彼は「あそこ・・」と坂の下を指差した。
その坂の下を見ると、彼の車があと少しで国道5号線に飛び出るというギリギリのところで停まっていた。
どうも、ここんとこの寒さで坂道が凍り、停めていた車が勝手にスキーのように坂の下まで滑っていったらしい。
そして、不幸中の幸いというべきか、車は滑り落ちる途中で坂道に面した民家の壁に当たり、そのおかげで減速され、国道まで飛び出なかったらしい。
そこのお宅には大変なご迷惑をお掛けしてしまったが、もし、壁にぶつからないで車が国道まで飛び出していたら、大事故になっていたことだろう。
冬の小樽は恐ろしい。
僕らはお巡りさんを呼び、事情を説明した。
後日、保険がおり、なんとか後始末はできたとのことだった。
今は、昔よりロードヒーティングが増えてきているので、こういうことはあまりないかも知れないけれど、可能性はゼロではない。
坂の途中に車を停めるのは、やめた方がいいと思いますね。
・・・・話は思いっきり変わります。
ある先輩と吞んでいた時、その先輩がこんなヨタ話をし始めた。
「こないだ、地獄坂から花園町へ呑みに行く時よ、ソリに乗ってずーっと滑り降りてノンストップで居酒屋まで行ったべや」
僕は、
「いやいや、ソリで国道5号線を渡るのは無理でしょ」
と言った。
先輩は言った。
「お前、考えてみー、すげースピードで滑り下りるからよ、『はれるや』の横の急な上り坂で思いっ切りジャンプしてよ、国道なんか軽く飛び越えちゃうのよ」
「・・・・ウソでしょ」
「・・・・ウソに決まってるべや」
「ガハハハハハハ」
「ガハハハハハハ」
なんか、こんな他愛もない会話が懐かしい。
これも坂の多い小樽ならではのヨタ話でないかな。
だけど、良い子の皆さん、決してマネはしないでくださいね。
もう一度言います。
このソリの話はウソですのでね、絶対にマネしないでくださいね。
(みょうてん)