授業
今回は、30数年前の元商大生の単なる思い出話です。
30数年前の大学1年生の時、僕が最も苦手としていた授業が「英会話」だった。
受験で「リスニング」なんてのがない時代、僕の受験勉強はひたすら英単語を覚えることだった。
しかも、スペルを間違わないようローマ字読みで覚えていた。
それだも、英会話なんかできるはずがない。
なのに、その「英会話」の授業では一切の日本語が発されない、実に恐怖の時間だった。
そして、僕と同じ仲間が、同じ高校出身で共に1浪して商大に入学した「ソガ」と「ヒロシ」だった。
英会話の先生は「マイケルカー」。
(勝手に親しみをこめて「先生」を省略させていただく)
英会話が全くダメな我々3人は、とにかくマイケルカーにあてられないよう、ひたすら気配を消して授業を受けていた。
しかし、冬休み前の授業でついにソガが犠牲となった。
マイケルカーはソガに聞いた。
「ソガ、冬休みは何をするんだ」
(これを聞き取るのも大変だったのだが)
すると、ソガは冬休みにアルバイトをすることを見事に2つの単語に収め答えた。
「あい わーく」
すると、すかさずマイケルカーから突っ込みがきた。
「ウェー!」
「え?」
「ウェー!」
「え?」
「ウェー!」
困ったソガは「ウェー!ってなによ」と我々に助けを求めてきた。
すると勘のいいヒロシがひらめいた。
「ホエアだべ!、WHEREだって」
つまり「どこで働くの?」と聞いているのだ。
ソガは答えた。
「いん とうきゅう」
ソガの冬休みのアルバイト先は東急デパートだったのだ。
それを聞いて、マイケルカーはやさしく「OK」とうなずいてくれた。
別の日、ついに僕が犠牲となった。
英語版連想ゲームをやることになったのだ。
マイケルカーが出したお題をもとに、英語でヒントを言って回答者に答えさせるのだ。
そして僕がその役になってしまった。
お題は「GREEN」。
お題を出された瞬間、僕は困惑してしまい、思わず
「ぐりーーん、かぁ」
と大きな声で言ってしまった。
それを聞いて、クラスのみんなが一斉に笑いだした。
しかし、マイケルカーだけが笑わなかった。
恐らく、僕の「ぐりーーん」があまりにも見事な日本語だったものだから、マイケルカーは僕の「GREEN」を聞き取れなかったんでないだろうか。
ここはチャンスである。
僕は、すかさず回答者であるソガに
「からー おぶ ぐらーーす」
とヒントを言った。
ソガは速攻で答えた。
「ぐりーーん」
クラス中拍手喝采である。
それを見て、マイケルカーはやさしく「OK」とうなずいてくれた。
成績はなんと「優」であった。
誰が何と言おうと「優」なのだ。
今でも英語は苦手である。
(みょうてん)