小樽の軌跡

temiyasen21

 この線路は,北海道で初めての鉄道が通ったらしい.旧手宮線と言う.よく使われていたのは石炭から石油へとエネルギー革命が起こる前だろうが,この場所に立つと歴史の重みを感じる.ところによっては、完全に草に埋もれてしまった場所があったり、表情豊かだ.

 土日に行ってみると,カップルや観光客が多い.電車の通らない線路は珍しく,スタンド・バイ・ミーの影響もあるのか,皆に忘れ去られてしまったような青春ドラマの影響なのか,線路の上に立って,両手を肩の高さまで広げてバランスをとっている人を見ることがしょっちゅうある.線路から落ちてしまわないように両手をぱたぱたと動かしている必死の表情がおもしろい.

 そして,この線路は遊歩道になっているだけではなくて,車道にもその跡が残っている.車でその線路を通る時は,止まらなくていいという看板があるのにも関わらず,車のスピードを緩める人がいる.そういう人は,小樽の人ではないことがすぐわかってしまう.小樽の人はスピードを落とさない.

 手宮線の場所にもよるが,季節によって表情を大きく変える.

 夏には潮祭りと合わせた,風鈴を飾り,来場者に夏の暑さを忘れさせるような,涼しげなイベントがおこなわれ,冬には,ろうそく1つ1つの小さな温かさでもあたたまるような,イベント“雪あかりの路”が行われる.

 そう,旧手宮線という観光スポットがあるだけではなく,今ではそれに加えて新たな価値が付け加わっている.この前なんかもう,国際レール走り大会なんていうイベントさえあったらしい.ちなみに,なんで国際なのか?と思う方もいるだろうが特に深い意味はないらしい.その方が面白いからだそうだ.

 昔は日本の物流を支えていたが,その役割を変え,存続の議論を乗り越え,小樽に来る人の楽しみを創造している.毎年の四季折々の中でその雰囲気を変えつつある,その姿は,我々に過去の取り組みを伝えるだけではなく,これからの小樽をどう支えていけばいいのか?ということを現代の私達に伝えてくれているような感じがする.

(吉)