塩谷文庫歌

shioya_bungata

 私が小樽に来た小学校2年、昭和41年(1966年)の夏、母が海水浴に連れて行ってくれることになった。海なし街の美唄から引っ越してきて、海水浴に気軽に行ける環境に姉共々大いに喜んだものだった。

 海水浴というと、何といっても蘭島海岸が一番人気だった中、「しおやぶんがた」に行くと言うのだ。誰に聞いたのか、バスを降りるとすぐに海岸があり、人もまばらで落ち着くよと言われたらしいのだ。

 確かに国道5号線のバス停からすぐに海岸があり、移動アクセスは良かったのだが・・・、何もないのである・・・。人もまばらで、海の家もなかった気がする・・・。いや、一軒くらいあったのかもしれない・・・。

 そこには、その年のみ2-3回行ったであろうか・・・。前述の親子3人で行った時と、岩見沢から従兄弟が出て来た時にも行った事があった・・。わずかな記憶の中に甦る。

 さて、時を経て海水浴シーズンの渋滞回避のため、後志の農産物をスムーズに運搬する目的で、国道の山側に小樽市最上から仁木町南町まで農道(フルーツ街道)が整備された。

 その農道、小樽側最初のトンネルが、文庫歌トンネルという。はじめてここを通った時、トンネル入口上部に大きく書かれているトンネル名を読みながら、
 「ぶんこうたトンネル???・・・、ぶんこうたトンネル???・・・、あっ、この当て字がぶんがたと読ませているのかぁー」

 その時にはじめて「ぶんがた」を「文庫歌」と書くのを知った。ご想像の通り、アイヌ語読みに漢字に当てはめたようだ。

 アイヌ語「プンカルオタ・蔓(かずら)の絡まる砂浜」から「文庫歌(ぶんがた)」となったと色々な本に記載されている。

 ちなみに我々が塩谷海岸と呼んでいるところは、𩸽澗海岸(ほっけま)とこの文庫歌海岸に分かれていると、塩谷出身の友人が教えてくれた。両海岸の境目は、国道から右側に塩谷海岸の方に旧道を入って行った突き当りだという。地元の人や出身者しか知らない、ヤフー地図やグーグルマップにも出てこない深い情報を教えていただいた。

(斎藤仁)