小樽の夕日
小樽の夕日には2つの顔がある。
山に沈む夕日と、海に沈む夕日だ。
小樽の中心街は西側に山があるため日が沈むのが早い。だから小樽の夜は少し長い。冬場なんかは南中高度が低いからただでさえ早く沈む太陽がさらに早く逃げるように沈んでいく。
太陽が山に隠れても空はまだ真っ暗になっていない夕方。この時間は一番さみしい時間だ。太陽に家に帰るように催促されているような気持ちになる。
山の麓ら辺にいると、自分のいる場所は太陽が沈んでいるのに背の高い建物や山から離れた場所はまだ日がさしていたりする。そうした景色がなんだか不公平に感じたりもする。でもいずれどこもかしこも暗くなって街灯がつき始める。街灯がつき始めてやっと夜になった気がする。
小樽から山を越えて余市側に行くと、今度は太陽が海に沈む。海に沈む太陽は山に沈む太陽に比べてオレンジがかっている。まわりの空も黄色く滲んでいる。写真のように、まさに夕日といった景色である。夕日が水面に反射して太陽との間にあるものは逆光写真のように黒い影に見える。その光景は一日の終わりを何も言わずに伝えてくる。そしてそのまま太陽が沈んでいくのを最後まで眺めていたい気分になる。海に沈んでいく太陽を最後まで見て、最後まで沈みきった時にやっと夜になった気がする。
同じ小樽の中でも夕方は太陽のせいで違った時間が流れている場所がある。その場所でしか感じることが見ることができない景色や感じることのできない気持ち。
天狗山の頂上からは雲海に沈む夕日が見られることもあるらしい。その景色はいったいどのようなものでどんな気持ちにさせてくれるのか。
普遍の象徴である太陽が変化を与えてくれる。それも小樽にしかない魅力の1つである。
(商大むぎちゃ)