遊び心
観光地として有名な小樽。来てくれた人を楽しませたい、そんな心意気が町の中に浸透しているのか、小樽を支える地元の人達にもユニークな人が多いのかもしれない。
それ故なのか、小樽に住んでいるとふとした日常の中で写真におさめておきたい、と思うことがあまり珍しくない。
この写真は小樽の桜ヶ丘球場の前で撮ったものである。
ある朝、珍しく早朝に目が覚めたので散歩でもしようと選んだコースが花園という地区だった。
近所に総合体育館や球場、公園やランニングコースがあると知っていたのでちょっと行ってみたかったのだ。
徒歩10分ほどでランニングコースに到着する。朝の小樽の空気は澄んでいて清々しい。
犬の散歩をしている人、ランニングをする人とたまにすれ違う。
変わった鳴き声が聞こえるなあ、と思い球場の中を覗くとカモメが沢山降り立っていた。
「ああ、港町の公園にはカラスでもなく、ハトでもなく、カモメが来るんだ。」
と新しい発見に少し気を取られていると、奥の方で草を刈る音が聞こえた。
散歩に出ていたのが午前4時半。市民の邪魔にならない時間に仕事をしていたのだろう。
特に気にせず花園周辺を散歩し、数十分後に帰路途中の球場に戻った。
すると、先ほどは無かったはずのある3文字が視界に入った。
「オタル」
最初は見間違いかと思ったがやはり紛れもないオタルの文字。
芝を管理している人の単なる思いつきなのか、それとも草刈りの度に出没する球場の名物なのかは私には分からない。
でもちょっとしたその遊び心に笑わずにはいられなかった。
今回は特に印象が強かった芝刈り後の風景を取り上げてみたが、この日の散策でこれ以外にも行ってみたいお店や景観ポイント等を見つけることができた。
もちろん、運河や堺町通りといった有名な名所や、観光雑誌で調べた場所を訪れるのも楽しいと思う。しかし、もし時間があるなら、観光ついでに市街地を離れて歩いてみると、ちょっとした発見があったりと面白いかもしれない。そこには小樽に住む人々の遊び心が隠れていると思う。
(こつ)