おたる無尽ビル
おたる無尽ビルは花園町を四つ角が、1丁目から4丁目に分けている花園十字街の一角にある。ちなみにおたる無尽ビルは4丁目の角に建っている。
ここは元北洋銀行小樽支店であった建物だ。さらに付け加えると北洋銀行発祥の地でもある。無尽とはご存じ無尽講など金融形態のひとつであるが、ここが北洋銀行の前身小樽無尽という小樽の豪商寿原一族が経営する銀行の本社だったのでこの名前が付いた。
平成10年(1998年)拓銀が破綻し、北洋銀行が後継銀行となった時、しばらくの間ここで北洋銀行小樽支店として営業していたが、本社よりここの廃止取壊し予定が発表された時に、この建物を改修保存するため、伊藤一郎さん、中一夫さん、田島幸明さんの3名が中心となりNPO法人小樽トラスト協議会を平成14年(2002年)に設立した。
昭和10年(1935年)築、頑丈で各階の天井が通常ビルの1.5倍はある鉄筋コンクリート3階建の建物は、1階に田島さんの経営する游人庵、2階は飲食店、旅行会社などテナント5軒と会議室、3階の大会議室跡は、階段しかなかったなどの理由で、北洋銀行時代も既に使われておらず、雨漏り、結露などで床、壁ともに荒れ放題であった。しかし、改修の機会にエレベーターを新築し、壁、床を最低限の補修をし、音響、照明設備を札幌のライブハウスなどから譲り受け演劇、ライブなどができる多目的ホールとして生まれ変わった。
この3階ホールを借りて、平成16年(2004年)から2年間ほど月一の割合でディスコパーティーやオールディーズライブを開催していたことがある。床のピータイルは長年の雨漏り、結露などで剥がれていたが、一枚一枚協議会メンバーが手弁当で補修していた。壁の塗装の一部は剥がれ落ちそうで、少しでも触れると崩れ落ちる寸前のところが何か所もあった。ステージ後ろ、窓などを覆っていた暗幕は、廃校となった住吉中学校、石山中学校などから譲り受けたものであった。
現在は2階のテナント、会議室部分は、游人庵の宴会場として生まれ変わり、3階イベントホールも綺麗にリニューアルされ、イベントホールの機能はそのままに、同じく游人庵の大宴会場となっている。
最近は、花園十字街店前に大型バスが停まり、アジア系の観光客がぞろぞろと下りてくるのをよく見かけている。田島さんの息子である明宏専務に聞くと大変忙しいようだ。
私は今でも花園連合町会や小樽体育協会の総会懇親会などでよくおじゃまする。たまにランチにうかがうと明宏君が笑顔で迎えてくれる。
(斎藤仁)