喫茶コロンビア

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 晴れた1月のある日、白い息を吐きながら、友人達と連れ立って小樽をゆっくり散歩する。歩道には雪が固まりツルツルになっていて、足場が悪い。運河の近くを通り、メルヘン交差点を抜ける。寒いが、外国人観光客で大賑わいだ。

 休憩をしようと、メルヘン交差点にある喫茶店へ入る。しかし、店内には見渡す限りの人、人、人である。どこのテーブルも観光客で溢れ、大繁盛であった。この小樽随一の観光名所では、やはり観光客が主役である。

 そそくさと店を出て、さらに歩みを進め花園銀座商店街、通称花銀の道を歩く。
 そこで出会ったのが、喫茶店「コロンビア」だ。前から噂には聞いていたが訪れるのは初めてであった。店の外観から、「入ってみたい」と思わずにはいられない。昭和ノスタルジーを感じさせる看板、佇まい、ガラスのドア。
 期待をして扉を開ける。外観以上にインパクトのある内装をしている。まず目に飛び込むのは、天井から豪華に垂れ下がるシャンデリア。そして席はソファのボックスシートである。店内の装飾はやはりどれも昭和の感じを残している。昔家族で泊まったホテルみたい?幼いころ年に何度か訪れた祖父母の家のよう?いろいろな懐かしいものの記憶が蘇るようだ。ソファのシートに腰掛ける。

 先ほどの賑わいとは反対に、程よい静けさと落ち着きのある店内だ。シャンデリアの黄色い灯りのおかげか少し眠くなるようだ。
 この日は、ウィンナーコーヒーを注文した。程なくして、上品なクリームの乗ったウィンナーコーヒーが運ばれてくる。あまいクリームと、温かいコーヒーをゆっくり飲みながら、友人と他愛のない会話をする。ゆっくりと、穏やかに時間が流れる。それは明らかに、普段の生活の時間とは違っている。それはこの店内の雰囲気のせいか、一日中小樽を散歩したせいか、あるいはどちらのせいでもあるかもしれない。
 忙しい時間を抜けだせる、優しい喫茶店であった。

(Keroko)