当たり前の風景、当たり前の坂

momiji_bashi

坂が多いことで有名である小樽。そんな中、毎日通っている坂がある。
それが一番好きな坂であり、もしかしたら一番小樽らしい坂なのかもしれない。

小樽に住んでいれば坂を通らなければ行動できないほど、坂が多い。
通っている大学もそうである。学校に行くには何個も坂がある。
基本的に邪魔に思うことの多い坂。しかし、紅葉橋の坂は違う。

一人暮らしを始めて、住んだ家が紅葉橋のすぐ下であった。
家の目の前には於古発川という川が流れている。雨が降った日にはより一層激しく音を立てて流れる。
家の中にいても雨が降ってきたことが、川の音でわかるほどである。
その川に架かる橋が紅葉橋である。

学校に行くときには通ることはない。学校よりもアルバイトに行く回数が多かった私。
いや、学校をサボっていたという意味ではないですよ?
アルバイトの通勤路、買い物や小樽駅に行くときにも必ず通った紅葉橋。

当たり前のように毎日通っていたが、よく見ると小樽でしか味わえない趣がある。
特にここにいると、昭和初期のままの空気を味わうことができる。
裁判所や市役所、体育館にすぐ近くに公会堂が見える。古くからある住宅もここにはある。
新しい建物に混ざって古くからある建物を見ることができるのだ。
公会堂には能楽堂があり、そこで能をやっていることがある。
全く知識もないし見たこともない私であるが、ついつい見とれしまう。
アルバイトに行く途中、紅葉橋の上から眺める能はなんとも古風であり、心が落ち着く。

季節によって顔が変わる。秋には紅葉がキレイで、冬には真っ白に染まる。
疲れている時も辛いことがあった時も、楽しいことがあった時もいつも通っていた坂。
通る度に顔がほころぶ気がした。

当たり前のように思える風景も、実は不思議な世界観が流れている。
日常生活で味わうことができる場所が小樽なのだと思う。

(謙)