しろくま食堂
「女の子にモテたい」などという野心も枯れ果てた50過ぎの初老アマチュアミュージシャンにとって、ライブの唯一の楽しみは打ち上げである。
演奏が終わったら、一刻も早く「乾杯!!」と叫んで、グビグビと冷えたビールを喉に流し込み、旨い肴を喰いたい。
我々は常にそう思って、ライブ活動を行っている。
そして加えて言うならば、普段、札幌で活動している我々にとって、ちょっとでも地方へ出向くことができ、修学旅行的な気分が味わえれば最高である。
そうなると、その格好の地は小樽である。
小樽には「GOLD STONE」という北海道のアマチュアバンドにとって憧れのライブホールがある。
加えて、食い物の美味い店が沢山ある。
だから、我々の目標は、目指せ小樽!、目指せGOLD STONE!、目指せ旨い居酒屋!なのである。
そして、先日、ありがたいことに、ついにその「GOLD STONE」でライブを行うこができ、そのことは前回書かせていただいた。
今回は打ち上げのお話である。
ライブが終わった後、さてどこへ行こうかと思案していた我々に、バンド仲間が「しろくま食堂」というお店を教えてくれた。
話しによると、刺身の盛り合わせにビックリし、また、旨い日本酒も信じられないくらい安い値段で提供しているという。
早速、場所を調べたら、なんと「GOLD STONE」から程近いところにあった。
これはもう行くしかないと、我々は6人で「しろくま食堂」に向かった。
しかし、近くにあるはずの「しろくま食堂」は、なかなか見つからなかった。
そして、ようやく見つけて、思わず笑ってしまった。
まず、看板がないんだも。
そして、店の入り口に掲げている暖簾が、これまた凄いんだも。
正直、小学生の落書きかと思った。
だけど、だけどである。
僕の経験上、これは大当たりの店である。
これぞ「らしい店」である。
僕はすっかり嬉しくなり、暖簾をくぐった。
入っていきなり「懐かしい」って感じさせる造りが良く、適度な狭さも良い。
我々は早速ビールを頼み、評判の刺身の盛り合わせも頼んだ。
しかし、残念ながら閉店に近い時間であったため、ご主人に
「盛り合わせができるほど刺身が残ってないんです」
と言われた。
が、それで諦める我々ではない。
「あるだけ全部で盛り合わせを作ってください」
とお願いした。
そして出てきた刺身の盛り合わせは、「しろくま食堂」としては不十分なのかも知れないけど、我々の今までの経験からすれば、「盛り合わせ5人前」は十分に超える量であった。
また、お目当ての日本酒はメニューがなく、その代り、自分の好みを言うとご主人がいろいろ説明してくれ、好みに合う酒を選んでくれる。
「そうだよなあ、居酒屋はこうだよなあ」
刺身をつまみ、冷えたビールと旨い日本酒を飲みながら、我々は「しろくま食堂」を堪能した。
が、非常に残念であるけれど、お店に入ったのが閉店間際だったので、あまりにも時間がなく、十分に堪能することができなかった。
「今度は昼間に来て、しろくま食堂を制覇するぞ!」
と、本来の目的である「ライブ」のことなどすっかり忘れ、違った方向で絆が深まった我々なのであった。
(みょうてん)