松田ビル
日本銀行旧小樽支店の通りを挟んだ向かい側に、旧三井物産小樽支店 (現・松田ビル) がある。昭和12年(1937年)築。75棟ある小樽市指定歴史的建造物の一つに指定されている。
ここは、旧日本郵船小樽支店や日本銀行旧小樽支店のように、明治、大正期に多く見られる、古典的な近代ヨーロッパ様式のものではなく、無駄を省いたシンプルなアメリカナイズされた合理的なオフィスビルである。
三井系の建物の多くを手掛けた、横河工務所松井貫太郎の設計となっており、築80年近くなった現在も、オフィスビルとして、多くの企業、事務所が入っている。1階には喫茶店並木、小樽市公証人役場、階上には小樽のタウン誌「ラブおたる」の編集室、市内に5つあるライオンズクラブの各事務所、STV札幌テレビ小樽支局等が入居している。
黒御影石が貼られ、琉球産の大理石で内装された玄関を入り、立ち上がりの高い階段を数段上がると、正面にどちらも年代物の2つのエレベーターが、目に飛び込んでくる。
現在は、そのうちの一つ、新しい方しか稼働していない。ただし、新しいといっても、40-50年位のキャリアはあるのではと簡単に想像できる。何しろ箱に乗り込むと、行先階ボタンが、手動で押し引きできるタイプなのである。最近では、とんとお目にかかったことがない型である。
古い方は、築年と同じ、昭和12年製となっており、昭和9年製大国屋デパートのエレベーターが、平成5年(1993年)4月で無くなった今では、小樽の中で、間違いなく現存する最古のエレベーターということになる。もちろん稼働の有無は不明であるのだが、玄関ホールから眺めるだけでも価値があるかと思うのだが・・・、いかがでしょうか?
そのエレベーター横には、昔のオフィスビル各階に設置されていた、私設郵便ポストがある。もちろん今は使われていず、無造作に投函口にガムテープが貼られているのは、美観上いただけませんが・・・。
余談だが、午後のローカル情報番組で、札幌市中央区北大通にある「大五ビルヂング」を紹介していた放送で、同じくビル内私設郵便ポストを、これは何かと、クイズになっていた。回答者のほとんどが分からず、正解を聞いて大変驚いていた。松田ビルのそれを知っていた私にとっては、簡単なクイズであったが、意外と知らない人が多いと実感した瞬間だった。
(斎藤仁)