本局
小樽に移り住んだ人たちが、市民が使う役所名に、そこはどこの局かと、戸惑うものに「本局」がある。
しかし、局が付くと言えば郵便局と相場が決まっているので、そこが郵便局の本部らしきところと想像するのに、さほど時間はかからない。
細かい規定は省略するが、業界では、その都市、その地域を代表する郵便局を本局と呼ぶようだ。しかし、どうも他都市では、あまり使わない呼び名だという。たとえば、お隣札幌は、一番中心の札幌中央郵便局を単に中央郵便局と呼んでいる。
色内1丁目、北のウォール街交差点にある小樽郵便局を、市民は本局と呼ぶ。その前にあるバス停が本局前であり、中央バスが運営し、市街地を循環する、山手循環線等の起点となっているバス停である。バスの行先表示板にも大きく本局前と書かれている。
「あんた、どこまで行くのさ」
「本局前まで行くのさ」
「じゃあ、途中まで一緒だ」
元気な小樽レディーの会話が交わされる。
この建物は、歴史的建造物である旧拓銀小樽支店(ホテルヴィブラントオタル)、旧三菱銀行小樽支店(小樽運河ターミナル)、旧第一銀行小樽支店(紳装)と対向しているということもあり、改築時に景観に配慮した、三つの建造物に勝るとも劣らない作りとなっている。将来の歴建候補間違いなしと思っている。
蛇足だが、もう一つ、小樽には「本線」という通名のバス路線がある。国道5号線を走る市内路線バスを呼ぶのだが、手宮¬-新光2丁目行、高島-桜町行が主要路線、その他朝里川温泉線、望洋線等の国道通行部分もそれに当たる。
「お前んち、どやって行けばいいんだべ」
「本線なら、どれ乗っても大丈夫だあ」
高校時代の微笑ましい会話を思い出す。
小樽の人は「本~」が好きなのだろうか。それとも単に、省略した短い呼び名を好むのであろうか。もちろん、読者のみなさんと同じ、後者と思うが・・・。
(斎藤仁)