山と家
小樽の魅力の一つとして山がある景色が挙げられる。
そもそも小樽そのものが山なのではないかと思うことがある。というのも、小樽の家々がまるで山の斜面に無理やり建てられているように見えることがあるからである。
私は毎日電車通学しているのだが、駅のホームの裏に広がる景色には何か不思議な感覚を覚えることがある。この感覚は去年、イタリアの「マナローラ」という小さな村に行った時の感覚に似ている。
マナローラはイタリアの北西部の地中海側に面しているチンクエテッレという5つの村の集合体の一つであり、そこへ行くための交通手段は近くのラ・スペチアという都市から出ている1時間に1本の電車が主である。マナローラはその5つの村の中でもとりわけ不思議な外観を持っている。グーグルで「チンクエテッレ」と画像検索すると真っ先に表示されるのがそれである。
海岸沿いの山々の斜面にびっしりと築かれた家々は中世から残るもので、古めかしさの中に荘厳さを感じさせるものであった。外装の色がバラバラでカラフルな家々は一見乱雑に建てられたように見えるが、調和があり、美しさがあった。村を一望できる場所から眺めると、それはまるで1つの絵画のようである。村の路地を歩くとヨーロッパ生まれではない私でも、温かく、何となく懐かしい空気を感じることができた。
冒頭の駅のホームの裏の景色のような不思議な空気感を持つ景色が小樽には数多くある。その源は港町ならではの、山とそこに建つ家々の調和なのではないかと思う。
私は事情があって2年前の冬を最上町で過ごした。そのときに通学路として大学の1号館側の道を使っていたのだが、そこからの景色が、イタリアのマナローラの景色を拡大したようなものであった。乱雑さの中の調和、山と家々のコントラストがとても心地よく、毎日行きと帰りの途中で立ち止まり眺め、気に入れば携帯で写真を撮ったりしていた。
小樽にはヨーロッパにも引けを取らない美しい景色がある。だがその美しさは決して飾らない、温かさがある。
ちなみに、マナローラが属している5つの村の集合体「チンクエテッレ」は世界遺産に登録されているので、小樽も世界遺産に登録される日が来るかもしれないかと個人的に思っている。
(勇)