手押しポンプ
「小樽昭和ノスタルジー」という写真集が、ぶらんとマガジン社から平成25年9月に上梓された。
小樽の懐かしい写真と、同じアングルからの今現在を対比させ、時代の変化、変貌を楽しませてくれる。また、小樽の名店、名人を紹介している一冊だ。
今回掲載させていただいた一枚は、巻頭部分にあったものである。市内のどこかおわかりだろうか?
写真にキャプションは付いておらず、場所の確定はできないが、見覚えのある手押しポンプと商店看板にピンと来た読者のみなさんも多いのではないか!!!
ここは、花園3丁目旧花園病院前辰巳通りから、相生町踏切を越えて、通称仏壇通りとの四つ角の写真である。カーブミラーがあるので、おそらく、昭和50年前後のものと思われる。この時、シャッターの下りている藤田商店が営業をしていたか、否かはわからない。
私は、昭和62年からこの界隈に住んでいるが、その頃もうすでにこの酒店は閉めていた記憶がある・・・ような・・・ないような・・・。
商店看板の隣は、世界三大コーラ・・・???・・・と宣伝していた、現在の天理教館(花園2丁目)の場所にあった北海屋が代理店だった、ロイヤルクラウンコーラの看板。
このRCコーラ、銭湯に行くと、必ず置いてあり、小樽ではコカ・コーラ、ペプシコーラよりポピュラーだった・・・。まあ、そういうことにしておこう。
昔は、市内のあちこちにこのRCコーラの看板が見られたものだ。
現在、ここに新しい住宅が建ち、酒店の名残りはないが、今も玄関前に清涼飲料水の自販機が置かれているところを見ると、まだ藤田さんが住まわれているようだ。
この手押しポンプ、現在の状況は、手押しハンドル部分が壊れて現存しない。しかし、シリンダー、バケット部分は写真の風情のまま残っている。
昭和30-40年前半までは、市内そこかしこにこの手押しポンプがあった。夏の暑い日差しの中、乾いたポンプに少しの水を含ませ、手押しハンドルを上下させると、不快な金属音の後、ほどなく水が地下から上がってくる。
子供のころは、それが不思議だった。上水道、電動ポンプが発達した現在では、ほとんど見られなくなった手押しポンプ。
この四つ角で、今なおみんなを見守ってくれている。
(斎藤 仁)
写真:小樽昭和ノスタルジー(ぶらんとマガジン社刊、17ページ)