小樽のひとよ
小樽のご当地ソングといえば、石原裕次郎「おれの小樽」、都はるみ「小樽運河」、歌手の小金沢君が使っている・・・のCMで有名な小金沢昇司「小樽」などがあるが、一番に挙げられるのは、何と言っても昭和42年の大ヒット歌謡曲、鶴岡雅義と東京ロマンチカ「小樽のひとよ」だろう。
メインボーカル三條正人の甘い歌声は、日本中に小樽の名前を大いに知らしめた。うなずいていただける歌謡曲ファンも多いのではないだろうか。
昭和40年代、ラテンバンド、ハワイアンバンド、男性コーラスバンドがこぞってムード歌謡男性コーラスの世界に足を踏み入れていた。若者がタイガース、テンプターズなどのグループサウンズに狂喜乱舞していた頃である。
3年前の12月23日、恵庭の専門学校や福祉施設の食堂を運営している会社から、地元町内の方々のための、クリスマスダンスパーティーを開催するので、ボランティア生バンド演奏をお願いできないかという依頼が、私たちのおじさんバンド「ザ・パーティーズ」に舞い込んだ。
会場は広い専門学校の大食堂。たくさんの地元の方々が集まって、ジルバにマンボ、ブルース、ドドンパなどを楽しそうに踊っていた。苫小牧、千歳、札幌などからもバンドが集結し、私たちの演奏時間は30分。昼から夕方までの長丁場、出演バンドが順調に消化されていった。
私たちは、踊りやすいということで、ミドルテンポ、アップテンポのオールディーズや、ロックンロール、ベンチャーズナンバーなどを選んで、演奏していると、妙齢の男性が私のそばに来て
「あんた方、小樽から来ているんだってか、そしたらやっぱり小樽のひとやってくれや、あんたらならできるべさ、わしルンバ踊るから」
「お兄さん(本当はかなりのおじいさんだが・・・)、ごめんね、今日は用意してないんだわ、今度来たときまでの宿題にしといてな」
その元気な男性と私は、曲の間奏の時にこんな会話をしたのであった。演奏しているバンドメンバーは何か、いいがかりでも付けられたのかと、心配な顔でこっちを見ていたが、会話が聞こえるわけでもなく、演奏終了後に笑い話で説明させていただいた。
この時に、改めて忘れかけていた「小樽のひとよ」を再認識させてもらったわけである。今は小樽の名前は全国津々浦々まで鳴り響いているが、小樽の名前を全国区にした歌謡曲のはしりだったのである。
ちなみに「小樽のひとよ」はザ・パーティーズのレパートリー50有余曲には未だ入っていない・・・。
(斎藤 仁)