氷のお城

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 冬の小樽の景色は、雪・雪・雪、といった具合ですが、この真っ白な雪景色にアクセントを加えているのがつららです。
 今は気密性の高い建物が多くなったため、昔ほどではないようですが、それでもあちこちで軒下にぶら下がるつららを見ることができます。日があたってキラキラと輝く様子は、宝石のようです。

 つららで有名なのは小樽市指定の歴史的建造物でもある旧浪華倉庫、現在の小樽運河食堂です。ここのつららは規模が違います。氷柱と言ってもいいくらいの太さで、長いものは下まで伸びていて、氷の牢のようです。長い冬の間、この牢に春が囚われているかのようです。

「雪あかりの路」の開催に合わせて、運河食堂の入り口近くにつららで作られたオブジェが飾ってありました。
 アンデルセンの『雪の女王』を筆頭に、氷の世界について書いた本はたくさんありますが、このオブジェを見て私は、
「白い魔女のやかただ!!」
と感嘆の声をあげてしまいました。

 白い魔女とは、C.S.ルイスの書いた壮大なファンタジー「ナルニア国物語」の第一巻である『ライオンと魔女』に出てくる白い魔女です。何年か前に映画化もされたので、ご覧になった方も多いと思います。(私は基本的に本で読んだものが映像化されても見ないことにしていますので、映画で白い魔女のやかたがどのように描かれているかは知らないのですが…)
 ものいうけものや、精霊や小人、半身がヤギの神フォーンなどが暮らすナルニアという国に魔法をかけ、ずっと冬のまま(しかもクリスマスの来ない冬!)にさせているのが、この白い魔女なのです。そして魔女が住んでいるのが「針のようにとんがった長い屋根のある小さな塔がずらりとならんで」いる小さな城なのです。

 運河食堂の氷のオブジェは、よく見てみるとハートの形の氷が飾ってあり、かわいらしいのですが、私の目には、もはや白い魔女のやかたにしか見えず、思いがけないところでファンタジーの世界に出合えたことに、ひたすら感動したのでした。

(川)