小樽駅
私が小樽駅に初めて降り立ったのは、亡父の転勤で、美唄から移り住んだ昭和41年(1961年)4月のことである。道都札幌でさえまだ歩道橋でホームと駅舎をつなげていた時代に、地下道でホーム、駅舎がつながっているなど、小学2年生になったばかりの私には、ここは東京みたいなんだと思ったものだ。
「東京の駅はホームから地下に下がるんだ」などと父親に聞かされていたのであるからであるが、下りたホームからコンコースをわたり、駅舎の眼前に広がる町並みにも、あれ下りてきて、上がってないはずだが・・・と、驚かされた。
小樽駅が上野駅とそっくりというのは、ついぞ知られていない。私がそれにはじめて気付いたのは20年前、家族旅行で東京見物に出かけたときである。はとバス東京見物の出発まで時間が少々あったので、上野駅周辺をぶらつきながら、遠くから駅舎を眺めると、あれ、どこかで見たことある形だなと、「小樽駅にそっくり。」と思ったのである。
過日、ある講演会で小樽駅長による「小樽駅今昔」というお話をうかがった。その時に、小樽駅の形は昭和初期の鉄道建築に多く見られた形で、全国に数多く造られたと。小樽駅も上野駅、横浜駅のミニチュア版として建設された。ただ、この形で現存するのは小樽駅、上野駅、そして中国の大連駅の三件しかないと。
札幌駅、函館駅、旭川駅、帯広駅など北海道主要都市の駅舎はすべて現代風に近代化された。昭和9年(1934年)築の小樽駅、そのままの姿で耐震化工事も無事終了し、この先ずっと私たちを楽しませてくれる。
私は、愛犬との散歩を日課にしている。写真の小樽駅は、散歩の途中で撮ったものである。小さく写っているのが我がシーちゃんである。
(斎藤仁)