中華か中花か

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 「小樽では、松月堂の奥村泰吉会長が焼いた中華まんじゅうの皮は、絶品だ」
これは、ある葬儀屋社員からの言質である。

 午年なので、年男。御年84歳になられる。写真の通り、かくしゃくとして現役でどら焼き、中華の皮を焼いている。

 小樽では、昔から葬儀の引き物は中華まんじゅうが多かった。現在のものより大きく、甘かったように思うが・・・。たまにしか味わえない、中華のどっしりとした質感は、甘党にとって最高の笑顔で、幸福に満ち溢れる時間を過ごさせてくれた。

 今でも、たまに用事があり、お店に顔を出すと、帰り際に会長は「ひとしちゃん、これ持っていきな、昔から好きだったしょ」と陳列されている中華まんじゅうを分けてくれる。

 「おじさん、いいですよ。それじゃあ、商品ですか、買いますよ」
 「いいから遠慮しないで持っていきな、お父さんも好きだったからな」
 「それじゃあ、遠慮なく。ありがとうございます」

 よだれを我慢し、帰ってから食しようと思うのだが、親の代からの遺伝子は、我慢できず車内でペロリ!!!

 子供のころより、中華まんじゅうは字の如く、中国から来たものだと思っていた。そのわり、中華料理のデザート、ごままんじゅうがでてきて、中華まんじゅうはでないんだなとも思っていた。

 コンビニカウンターに「中華まん」と称し、あんまん、肉まん等が並ぶ。それでも不思議に思わず、そちらは中華まん、こっちは中華まんじゅうと考えていた。

 昨年、テレビ番組「秘密のケンミンshow」で、信濃国須坂藩主の奥女中だった千代香さんが伝えたといわれる「中華饅頭」があると、長野県民カミングアウトで放送していた。これはほとんど、私たち北海道の中華まんじゅうと同じ感じだった。

 中華まんじゅうは、千代香まんじゅうから転化したものなのだと確信したが、泰吉氏の長男で三代目社長の秀幸氏に、その事を話し、テレビからの聞きかじりを教えてあげた。

 更に「松月堂では中華ではなく、中花という字を最近使っているけど・・・」と聞いてみた。秀幸氏曰く、自分が洋菓子の修行から帰ってきてから、この字を当てています。

 ただ、付け加えて、こうも教えてくれた。「小麦粉、砂糖、卵を基本材料とする生地を、和菓子の世界では中花種(ちゅうかだね)と呼んでいます。これを焼いたら、すべて中花なんです。中花は中華とも書き、北海道ではなぜか華の字が定着したようです。函館方面は中花の字を当てているお店が多いようです。」

 結局、中華(中花)まんじゅうは「中華」でも「中花」でも良いということの結論に達したわけだ!!!

(斎藤 仁)

写真:小樽昭和ノスタルジー(ぶらんとマガジン社刊,191ページ左上)