カトリック富岡教会の雪あかり
2013年の2月、日が暮れる頃、カトリック富岡教会に私は向かっていた。
その日は、カトリック富岡教会に「小樽雪あかりの路」の優しいキャンドルの灯りがともる日だった。
教会に着くと、大きなハート形の雪のオブジェとスノーキャンドルの優しい灯りが目に飛び込んで来た。ハートのオブジェは、夏に花が咲き誇っていた花壇のあった場所だ。
教会の門の辺りにはたくさんのカメラマンが、薄暮から青に移り変わる美しい夕暮れ時を切り取ろうとシャッターを切っていた。それだけこの教会は本当に魅力的だった。ハートのオブジェ、ルルドの洞窟のマリア像、赤い屋根に十字架を掲げた尖塔、どれをみても心が洗われるようだった。
しばらくすると女性が一人、教会から出て来て「どうぞ、中までお入りください。中も素晴らしいですよ。甘酒も用意していますので。」という。「少しのぞいて行くかな」と、靴を脱いでいそいそと2階の聖堂まで上がって行く。
聖堂のドアをそっとあけると、薄暗い部屋の中から聖歌が聞こえ、いくつものロウソクの明かりが目に入った。あの女性が言っていた事は本当だった。中央の通路に並べられたワックスボール、正面に優しい光に包まれた十字架。外も素晴らしいが、中はもっと素晴らしい。
私は無宗教で神も仏も信じていない。だが、この時ばかりは大きな居心地のいい優しさに包まれているような気持ちになった。それは神様だったのか。いや、それは教会の人たちの真心だと今でも私は思っている。
最前列の席で、しばらく正面の十字架を眺める。ふと周りを見渡すと、先ほど外にいた沢山の人たちはほとんどいなかった。他の雪あかりの会場に向かったのだろう。冬の小樽は天候のいい日が少ない。その日は絶好の雪あかり日和で、私も本当はあちこち見て回る予定だった。
体と心が温まるまで聖堂にいた私は、この日、他の会場を回る予定を変更し、玄関で暖かい甘酒をご馳走になりながら、教会の人々との会話を楽しんでから家路についた。
小樽雪あかりの路は冬の小樽を代表するイベント。2014年は2月7日(金)から16日(日)の日程で開催。カトリック富岡教会は例年2日間参加している。この冬もまたあの灯りが見られる事を祈って。
(まがらりか)