オタモイ唐門
秘境オタモイ海岸に下りる七曲りの坂の上に、人知れずオタモイ唐門は鎮座している。この唐門、もともとはオタモイ口から200mほど入った市道上に建っていた。
子どもの頃、余市方面へのバスに乗り、オタモイ口に差し掛かると、車内からこの唐門がまるで竜宮城への入口のように見え、その門の先にあるかもしれない、おとぎの国に誘っているように感じたものだった。
ここで由緒を少々紹介する。このオタモイ唐門は昭和7年(1932年)、オタモイ海岸にある子宝地蔵として有名なオタモイ地蔵尊へ、遠方からお参りする人たちの目印を目的の一つとして建設された。
正倉院と同じ校倉造で、釘を一本も使わない工法で、小樽の歴史的建造物を多く手がけた大虎組が施工している。小樽には大変珍しい中華風の建造物という事である。
建設には当時の小樽市長をはじめ、地元有力者の300円という大口寄付から、少ない人でも50銭という、多くの市民からの浄財により建設されたと記録されている。
唐門建設当時、かの幻と言われる「オタモイ遊園地」も建設され、多くの参拝者、観光客がこの唐門を通りオタモイ海岸へと下りて行った。
唐門は前述の通り市道の真ん中に建っていたので、その中を人のみならず、路線バスや車が普通に通り抜けていたわけだ。
しかし、昭和39年(1964年)市営のオタモイ団地が建設され、それに伴い多くの商店や住宅が立ち並び、交通事情を考慮した市道拡幅工事のため、昭和53年(1978年)現在地に移転した。
オタモイのランドマークとして慣れ親しんだ唐門とはいえ、移設するという事は、新築するより経費が掛かると巷間よく言われる。スクラップ・アンド・ビルドの時代によくぞ保存してくれたと、小樽市やオタモイ地区の人たちに賞賛を送りたいのは私だけではないはずだ。
ただ、移転した時点で築46年、移転して38年経つのだがこの場所に移ったのは一部の人しかもう知らないのでは・・・、と思っている・・・。
(斎藤仁)