一原有徳
「現代版画の鬼才」と称される一原有徳さんは、小樽在住の国際的に有名な版画家だった。惜しまれながら平成22年(2010年)10月に老衰のため、100歳の生涯に幕を下した。
私は、一原さんとは一面識もあったわけではないのだが、龍徳寺第一会館で営まれたお通夜にお参りさせていただいた。彼のご長男正明さんご夫妻が、私のスクールに通われていた関係での参列だった。
お通夜には小樽の山岳界の重鎮、西病院の西信博先生も参列していて、ごあいさつにうかがうと、
「あら、君はどういうつながりなのかな」
と質問され、前述の関係を説明させていただいた。
「西先生はどういうご関係で・・・」
と質問返しさせていただくと、
「一原先生とは・・・」
と西先生と故人との山の話しを聞かせていただいた。
故人が版画家のみではなく、山岳界の重鎮であったことも妙歴の中でもお話しいただき、版画においては、特に小樽貯金局を定年退職してからの活動が目覚ましく、冒頭に書いた「現代版画の鬼才」という称号をいただき、国際的にも高く評価されたという。
モノタイプ手法といわれる、一枚しか印刷しない版画の作品を祭壇に大小様々所狭しと飾られ、芸術家の葬儀らしい華やかな彩で装飾されていた。
お通夜での親族代表として、喪主正明さんのお話しの中で、90歳代の中頃に、自宅アトリエで単純な配合ミスをしてしまった故人に、
父さん、何やっているんだよ!!!と叱責したことがあり、
それ以後、作品を一切制作しなくなった。今思うとそれが原因の様で大変申し訳なかったと、後悔の念を申しておりました。
写真の作品は、そのお返しにと後日いただいたものである。現在、スクールに展示させていただいている。
(斎藤仁)
#記事初出時、西信博先生のお名前に誤記があり、修正いたしました。お詫びいたします。(2/10)