旧寿原邸

former_suhara_residence

 旧寿原邸は、水天宮の北側斜面に建てられている小樽市歴建のひとつである。大正元年(1912年)築で、3年前に築100年を迎えた。近所の旧板谷邸が解体された(一部残っているが・・・)今となっては、小樽に残る数少ない大邸宅建造物だ。

 もともとは、小豆将軍として全国に名を馳せた、高橋直治氏の別邸として建てられ、昭和の初期に寿原外吉氏の手に渡ったとされている。その後、増築、庭園の造営を行い、現在に至っている。

 ここは寿原家から昭和61年(1986年)小樽市に寄贈され、市が管理運営を行っている。2年ほど前までは、無料一般公開していたが、老朽化が激しく、寂しいことに今は公開を中止している。

 数年前の夏に、邸内を見学したことがあったが、すでに雨漏り跡や、壁紙が剥がれ落ちていたり、残念な状態になっていた。ただ、庭は、水天宮の法面を三段に地割りして造られ、上段は和室に面して池を配した日本庭園、中段は洋間から六角雪見灯籠が見られ、下段は、小樽港の出船、入船を一望に見下ろすことができるように造られていた。

 ここを事務所として邸宅の一部を小樽市から借りていたNPO法人関係者曰く、冬期間はトイレがほとんど毎日凍結し、台所も春まで水が出ない。毎日ペットボトルで飲み水他、生活用水を運んでいたとの事。3年ほどここを借りて事務所にしていましたが、冬期間は毎日がサバイバルでしたと言っていた。

 竣工100周年記念イベントを平成24年(2012年)8月4日に「旧寿原邸ガーデンフェスタ」と銘打ち、上記NPOが主催開催し、多くの市民、観光客で賑わったという。

 外見は趣のある大正時代の大邸宅であるが、ランニングコスト含め、実態は大変なようである。抜本的改革で、思い切って起業希望の若者たちに廉価で貸し出し、(旧)岡川薬局のように利用して稼ぐ方式で、飲食店、旅館、展示ホール等にするというのもいいと思うのだが・・・。

(斎藤仁)