旧安田銀行小樽支店
旧安田銀行小樽支店は小樽駅からまっすぐ運河方向に下りた、色内大通りとの交差点手宮側に位置している。昭和5年(1930年)築、観光客に人気の歴建の一つだ。
戦後、安田銀行が富士銀行に継承されたのにともない富士銀行小樽支店として、営業していた。その後、昭和45年(1970年)から日刊北海経済新聞社という、水産系業界新聞の社屋として長らく使われていた。
新聞社時代、幾度となくこの前を通過しているが、鉄扉や窓が開いていたのを見たのは、ほんの数回しかなかった。中央通り、色内大通りに面した2つの玄関上に~新聞社と看板があったのだが、免許取り立ての若い頃は、聞いたこともない社名で、本当に営業しているのかとも思ったものだった。さらに、入れないもどかしさに、中はどうなっているのかと、興味津々だった。
ネットワークが広がってくる年齢になると、ここの新聞社を知っている知り合いも出てくるもので、はじめて一般紙ではなく、水産系の漁業関係者のための新聞社だとわかった。どちらにしても、建物に入る機会には恵まれなかった。
平成13年(2001年)建物が面する中央通り(セピア通り)拡幅に伴い、斜め後方に曳家された。そして同時に外観も修復され、往時の輝きを取り戻している。解体して、多額の保証金を頂いた方が、簡単だったのだろう。私は、あえて面倒な曳家を選んだ、家主の心意気に建物や小樽への愛着を感じとっていた。
現在は平成19年(2007年)、札幌の大手和食チェーン店の一つ「花ごころ小樽店」として市民、観光客の胃袋を楽しませてくれている。
私も開店当初、家内と食事に出かけた。念願だった建物内部に入ることができたのだ。2階まで吹き抜けで回廊がある典型的な銀行建築であった。中央に7mの桜の木を据え、満開の造花を飾り店のシンボルにしていた。花の造花は見て触れれば誰にでもわかるので、木も作り物かと思ったが、なんと美瑛町産を防腐加工した本物の木というから驚きだ。
今は、色内大通り北のウォール街の大事な1ピースとして、観光客を大いに楽しませてくれている。
(斎藤仁)