風を感じるまち小樽

小樽駅から運河に向かって歩き始めると、海からの少ししょっぱい香りのいい風が吹いてきて、顔を上げると、
「海が見える。港もあるな。さすが小樽、海鮮が美味しいだけあって海のまちなんだな。」
私はそんなふうに小樽のことをわかった気になっていました。

しかし、私が初めて小樽商科大学を訪れた日、入学式の前日。
マップを表示したスマートフォンを片手に持って、生まれて初めて運河に向かってではなく、長く続くあの坂道に向かって歩きました。

「こんなに長い距離坂道を登るのか、4年間通えるのか、、?」
不安と汗にまみれて地獄坂を登り、限界ギリギリのところで大学に着いた時、とても爽やかで、軽やかで、涼しい風が山の上から吹きおろしました。

その時私は、小樽のまちが新しい表情を私に見せてくれたような気がして、嬉しくなりました。

小樽はその高低差のおかげなのか、同じまちにいながら全く違う風を感じられるまちなのです。

商店街で揺れる風鈴の音、葉擦れの音、風に舞うたんぽぽの綿毛、鼻をくすぐる潮の香り、街中の至る所からその表情豊かな風を感じることができるのです。

私はこの小樽のまちで、もっと色々な風を感じてみたいと思いました。
坂の途中に立ち並ぶ家々の間を吹く風はどんなだろう、港に吹く風はどんなだろう、あの神社の境内に吹く風は、あの公園のベンチに座って感じる風は、どんな風だろう。

そんなふうに、小樽の街を吹き抜ける風を感じながらまちを散策してみると、新しい小樽に出会えるかもしれません。
あなたの感じる風は、小樽のどんな表情を見せてくれるでしょうか。

(リンリン)


※本記事の内容は2022年7月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香