時代を超えるカフェ
「局薬川岡」と書かれた看板を掲げているモルタル塗りの建物。私が住んでいる令和時代の札幌ではなかなか見ることができない外観だ。
1930年にその名の通り薬局として建設され、小樽市の歴史的建造物に指定されている。現在は、(旧)岡川薬局として「Cafe White」というお洒落なお店に生まれ変わっている。
真っ白な雪が降りしきる冬の寒い日、私と母の二人はこのお店に訪れた。
店内へ足を踏み入れた瞬間、私は驚いた。趣深い外観から一転し、白を基調とした洗練された内装が現れた。
私はオムライスを注文。ここのオムライスはよくあるフワフワ食感ではない。なんというか、シュワシュワとした新食感。熱々の美味しいご飯に心が満たされる。
満腹になった私たちは店内を眺めていた。すべて異なるタイプの座席。それでも白色に統一されていて、ゆったりとした雰囲気に癒される。
すると、「Game Corner」と書かれた席を発見。
「そちらではファミコンがご利用頂けます。お気軽にお楽しみくださいね。」
私たちが興味を持った様子を察してくださった店員の優しい声掛けに心が躍った。
当日は天候が悪かったためか混雑しておらず、ファミコンが置かれた席に移動した。「ファミコン」という言葉は若者でも聞いたことがあるだろう。だが、私は実際に触れたのは初めてだった。カフェで昔のゲームをするというのは不思議な感覚。
私にとってはただの昭和のゲーム。
母にとっては子供の頃に熱中していた思い入れのあるゲーム。
母は好きだったゲームとの再会に興奮。その姿を見ているだけでも嬉しくて頬が緩む。なぜだか私も昔を想像し、どこか懐かしい気持ちになった。
気が付くと親子共に夢中にプレイしていた。私たちは追加でカタラーナを注文。贅沢な時間が再びやってきた。
形を変えながらも残り続けている建造物には自然と過去・現在・未来の繋がりを感じられる。世代の異なる親子の身体と心をぽっと温かくする。小樽の町にはそんな空間が溢れている。
(あみ)
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※本記事の内容は2021年7月時点の情報に基づいたものです。
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写真:眞柄 利香