明日への活力

テトラポットの手前で子供たちが水遊びをしている。
「小樽」と聞いて、私が1番最初に思い浮かべる情景だ。

小学生の頃、夏に家族でよくドライブに行った。行き先は決まって小樽。
手稲、銭函を越え、小樽駅のほうへ差し掛かると、父は必ず海を見るために祝津へ車を走らせた。祝津に着いて、鰊御殿から見る海は、空の青と重なりながら、太陽を反射させ眩しいほどキラキラしていた。今の言葉だと、エモいと表現するのだろうか。
当時の私は、両手をいっぱいに広げ、潮風を目一杯吸いながら、「なんかよくわからないけど、この景色が好き。」なんて思っていたことを思い出す。

そして時が過ぎて、大学が小樽に決まり、久しぶりに祝津へ向かってみた。
約6年ぶりに見る鰊御殿からの海は、何も変わってないはずなのに、どこか変わっている気がする。身長が伸びたせいで目線が変わったからなのか。時間が経つにつれ記憶が少しずつ塗り替えられてしまったからなのか。なぜかはわからない。

当時のように、両手をいっぱいに広げて、潮風を全身で感じながら目一杯吸ってみる。そこには、全てのカギが外れたような、解放感を感じた。コロナ禍による日常生活への制限、まだよくわからない大学生活への不安、やっと終わった受験。あげだすとキリがないが、私を取り巻くすべてを解き放つような気がした。リセットされるような感覚だ。

「無」になって、どこまでも続いていく海を眺めていると、自分の悩みや不安がちっぽけに感じてきた。もっと、この海のような広大で伸び伸びとした心を持ちたい!と私は強く思った。

鰊御殿から海の近くまで坂を下ると、小学生くらいの子たちが無邪気に水遊びをしていた。自分もこの子達みたいに遊んでいたな~と回顧しなからテトラポットの近くまで歩いてみる。当時の気持ちや記憶が鮮明によみがえった。
当時の自分とは環境も経験値も悩みも違う。しかし、たまには忘れかけていた無邪気さを持ってみるのもありではないかと思った。

小樽には、気持ちをリセットし、初心に帰らせてくれる力がある。そして、明日から頑張ろう!と思わせてくれる、素敵な街だと思う。

(くぅまる)


※本記事の内容は2021年7月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香