坂の上から
晴天の日。小樽駅の正面から坂の下を見下ろすと、キラキラと輝く真っ青な海が見える。
夏には小樽潮まつりの大きな赤いシンボルも一緒に見える。ああ、小樽だなあ。
小さいころは家族と、中高生時代は友人と。潮まつりの日は、屋台のたこ焼きの香ばしい香りや綿あめの甘い香り、「ドンドコザブン」とエンドレスリピートされる潮音頭に心弾ませながら、この坂を下ったものだ。
小樽は坂と一緒に思い出がよみがえってくる街。
思い返してみると、私は学生生活をすべて坂と過ごすことになるのか。もしかすると、小樽っ子の多くはみんなそうかもしれない。
小、中学校は坂道を歩いて通学していたから、特に思い出深い。暑い夏は汗だくで、寒い冬には吹雪に会い時に泣きながら通学した。辛いことや楽しいこと。部活の仲間との愚痴や悩み相談。すべて、小樽の温かな、時に急で厳しい坂たちが見守ってくれるのだ。
小樽の道路からあたりを見てみると、坂の斜面にたくさんの住宅や施設が建てられていることがわかる。車や徒歩でそこを通るときには、季節ごとに、特別で、ちょっとだけスリルある体験をすることができる。
特におすすめは、苗穂通りを進んだ草の生い茂ったガードレールの道。
春、5月くらいになると、小樽にも桜の風が吹き始める。坂の上を通る道からは、下にぶわーっと広がる街を見下ろしながら、タイミングが合えば線路を走る電車とその線路沿いに色づく桜の木を同時に見ることができる。道路わきの緑と桜の薄ピンク、奥には青い海が広がる、地元の人しか知らない隠れ絶景スポットなのだ。
季節は変わって冬、この時期が一番スリルある体験ができる。坂の上につくられた道路ゆえ、ギリギリ車二台が通れるほどの狭さの道路が雪でさらに狭くなる。
しかし、冬もまた春とは違った美しさが味わえるのが魅力。すぐ横をのぞけば雪あかりで照らされた街が一望できる。これこそが雪・坂・海・山が共存した小樽ならではの景色なのだ。
小樽は有名観光スポットだけではない。季節ごとに色を変える街並みを坂の上からのぞめる隠れスポットがあるのもまた魅力の一つなのだ。
(ぴくるす)
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※本記事の内容は2020年8月時点の情報に基づいたものです。
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写真:眞柄 利香