魅力のとんぼ玉

小樽が歴史に囲まれ、共生していることを知ったのは中学2年生の時だ。

宿泊研修で、僕と数人の友達は小樽とんぼ玉舘という所を訪れた。入口は壁一面に草が生い茂っていた。まるでお化け屋敷のような不気味さをもっていた。

だが一度中に入るとそんな不気味さは消え去った。照明がガラスに反射して明るく、幻想的な空間だった。そこには今まで見たこともない綺麗なガラス細工が並べられていた。僕はそれらに心を奪われ、見入っていた。

そして僕たちはとんぼ玉製作の体験をさせて頂いた。自分で好みの色のガラス棒を選び、バーナーで溶かして、球状に整えながら模様をつけ、冷やすという工程だ。苦労はしたが、このような伝統的な製法や店のレトロな雰囲気が僕たちの達成感や楽しい気持ちを大きくし、旅行の思い出を作ってくれた。

宿泊研修を終えて、僕は“昔ながら”が今回の旅行がより心に残る要因になったと考え、とんぼ玉について調べてみた。
とんぼ玉の歴史は古く、奈良時代にまでさかのぼる。厨子の装飾として使われるなど、仏教美術に深く結びついていた。
明治時代には当時の法令によりその製法は絶えたと言われていたが、現代の作家が戦後から復元に着手し始めた。

先人たちから愛されてきたとんぼ玉は、時代を超え、今の人たちに受け継がれ、愛され続けている。その長く濃い歴史は小樽の一部になり、多くの観光客を迎え入れている。

小樽がもつ「歴史」はなにもとんぼ玉だけではない。巧妙に作られているガラス工芸品、ガス灯やレンガ造りの建物が並ぶ街並み、和を重んじるおたる潮まつりなど、小樽ではあらゆるところで「歴史」を感じることができる。だが僕はなかでもとんぼ玉にそれを強く感じ取った。

家に取って置いてあるとんぼ玉を見ると、6年経った今でも思い出す。とんぼ玉が作った思い出を。小樽で過ごしたあの三日間を。

小樽のもつ「歴史」の力とは、人々の記憶を永く、色濃くしてくれるものなのではないだろうか。
僕はそんなことを考えていた。

(やまもと)


※本記事の内容は2020年8月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香