撮りたくなる街おたる

 涼しげな硝子がそこかしこを照らして、石造りの異国情緒あふれる建物が整然と立ち並んでいて、夜にはライトアップされた運河沿いの道がとてもロマンチックで… “小樽”という街を思い浮かべたとき、あなたはきっとこんな風景を想像したんじゃないでしょうか?風景の美しさに思わずカメラやスマホを構えてしまいますよね。
 でもそれって、小樽の魅力的な風景のほんの一部分なんです。活気にあふれた観光地から外れて、少しだけ遠くに歩いてみませんか?そこにはきっとあなたがまだまだ知らない、素敵で思わず写真を撮ってしまうような、そしてどこか懐かしい街“小樽”が広がっているはずです。

 まずは坂を登ってみましょう。
 坂を登るのは少し大変かもしれません… そんな時は顔を上げて周りを見渡してみてください。温もりを感じさせる教会、そのそばからこちらを見ている三毛猫、道端に咲く色とりどりの小さな花、振り返ってみると建物の合間からはきらきらと深い青色の海が輝いています。
 耳をすませば道のすぐそばを流れる水の音や木々の葉が揺れる音、遠くの方からはカモメの鳴き声が聞こえてきます。深呼吸をしてみるとかすかな潮の匂いと爽やかな新緑の香り。活気のある観光地とは打って変わって静かでどこか懐かしい、不思議な気持ちになります。

 私は春からこの街に住み始めて、毎日そんな坂道を登っています。それなのに未だに飽きもせず写真を撮ってしまうんです。そしてまた飽きもせずに、その写真を何度も眺めてしまいます。
 今までに住んだことなんてなかったのに、故郷のような優しさと懐かしさがあってホッとします。でも私が一番好きなイチオシの小樽の風景は、もう少しぶらっと歩いてみて、坂を下る頃に現れます。
 そう、夕焼けです。夕陽が小樽の街を優しいセピア色に染めていきます。この瞬間、私は思わず写真を撮ってしまいます。自分が今見ている坂の上からの静かで懐かしいセピア色の小樽の街並みを写真に残したい。忘れたくない。そう心から思うんです。

 小樽を訪れた時は観光地を満喫した後にでも、少しだけ坂を登ってみて下さい。きっとその日一番優しくて温かくて懐かしい小樽を見て、撮って、ホッと一息ため息がでることでしょう。

(べこちゃ)


※本記事の内容は2019年7月時点の情報に基づいたものです。