赤岩海岸

 赤岩海岸は、山中海岸と祝津目無泊海岸(現在のおたる水族館海獣公園)の間にある海水浴場である。この赤岩海岸に私は一度だけ行ったことがある。今から45年前のこと、中学3年生の夏休みだった。

 赤岩海岸の存在はその時まで、まったく知らなかった。行ったことはなかったのだが山中海岸という秘境があるのは知っていた。まさか赤岩の裏側に海水浴場があるとは露ほども思わなかったのだ。

 通っていた学習塾の先生が、この赤岩海岸の存在を教えてくれたのだ。それじゃあみんなで行こうという事になり、その先生を含み塾生数人と赤岩海岸に繰り出すこととなった。

 当時はバスを降りて長距離歩くなんて何とも思わなかった。それよりも未踏の地に行ける好奇心が大いに勝っていたものだった。

 電波塔の林立している赤岩山の祝津側に位置している下赤岩山直下に、赤岩海岸は存在する。小樽駅前から中央バス高島小学校行に乗り、終点一つ手前の赤岩2丁目で下車、山に向かって2キロほどダラダラと上がって行った。

 当時は砂利道だったのだが、現在は簡易舗装されている。しかし、風雪での傷みが激しく舗装していることがわからないほどのでこぼこ道が延々と続いている。

 オタモイ唐門から祝津までのハイキングコース小樽海岸自然探勝路と交わるところで車止めになっている。この峠を赤岩峠、車止めを赤岩駐車場と地図には記載されているのだが、駐車場というより車数台停められる広場という感じだ。

 ここから山を海側に下りる九十九折れの獣道が500mほど続き、風光明媚で奇岩連なる赤岩海岸に到着するのだ。

 その時は多くの海水浴客が来ていた。海茶屋もなく、水もトイレもない辺鄙な海水浴場に人が来るんだと、ひとしきり感心したのを思い出す。それ以来一度も訪れていない赤岩海岸である。

 小樽市史によると、なんと明治後半この地に赤岩温泉という海の幸を味わえる2階建の温泉旅館があったというから驚きだ。有名なオタモイ海岸に龍宮閣ができる30年以上前のことである。

(斎藤仁)