小樽と教会

 寄り道して帰ることはありますか?
 私は大学での講義を終えて帰る際、少々小道にそれて少し違う道を通ることがあります。いつもと違う道を通るとき、私はたまに思いもよらない出会いをすることがあるのです。

 商大通りを下る途中の路地を左に曲がると、閑静な住宅街の中にヨーロッパを感じさせる石造りの不思議な建物がたたずんでいます。不思議な雰囲気に思わず近寄ってみると、どうやらこの建物は教会のようでした。
 独特の形にカットされたガラスがはめられた窓枠と向かって左手のマリア像、どれも時代を感じさせます。
 献堂90年のこのカトリック小樽教会富岡聖堂は、小樽市歴史的建造物に指定されているのです。

 この教会は普段は一般に開放されており、だれでも入ってお祈りをささげることができます。入るときに扉に手をかけると、ギギィと木のきしむ音がして、なんだかワクワクしました。
 内側の窓枠には、小樽らしい色ガラスのきれいなステンドグラスがはめられており、教会内を優しい色で照らしています。木を基調とした温かい雰囲気の礼拝堂には、お祈りをしに来た人たちのための椅子がずらりと並んでいます。祭壇には、細かい意匠の施された十字架やマリア像が祭られてあります。

 北海道の中でも歴史の古い小樽は、明治時代に北海道の海の玄関口として栄えており、ヒトとモノが多く集まっていました。そんな小樽には日本風の建造物はもちろんのこと、洋風の建物が多くあります。海外から取り入れた新しい建築技術や意匠の優秀さは、産業施設のみならず宗教施設にも表れています。ゴシック調のこの建物もまた、カトリック宣教師が布教し、そして取り入れた建築技術によって建てられた建物です。

 この教会だけではなく、小樽にはいたるところに古き良き建物の気配があります。あなたが通ろうとした道を少しわきにそれてみてください。素敵な出会いが待っているかもしれません。買い物に飽きてしまったら、ぜひとも小樽の町で寄り道をしてみてくださいね。

(野々目)